【北海道わらこ精霊たちの旅日記】

 

 

 

特別編|降りてはいけない駅(後編・小幌、鹿と風の駅)

──静かなホーム。
列車はもう行ってしまって、
わたしたちは、春の風の中に立っていました。

 

 

 

「さっぽろ、じゃなかったね」
つくよ(函館)が、そっと笑います。

 

 

ここには、駅舎も売店もありません。

 


崖と森と、線路と、春の空だけ。

 

そんなとき。

「見て、あれ!」

めぐる(江別)が指さした先に、
 

 

一頭の鹿さんが、のんびりと歩いていました。

 

「わぁ……」


こよみ(苫小牧)が、小さな声をあげます。

地元出身のあまね(小樽)とうらら(小清水)は、
ふっと肩の力を抜いて微笑みました。

 

「いるよ。春になると、ふつうに歩いてる。」

 

   暮らしのすぐそばにある、春の命。

 

鹿さんは、ちらりとこちらを見て、

また静かに森へと消えていきました。

 

時刻表を見て、わたしたちは、はっとします。

 

 

「札幌方面……次は夜の7時!?」
 

「えっ、それまでどうするの……」

 

「……しゃーないべさ。」
あまね(小樽)が苦笑い。

 

「急がなくても、ちゃんと着くから。」

 

遠回りだって、旅は旅。

しかたなく、長万部行きの汽車に乗ることにしました。

 

 

ベンチに並んで座りながら、
また未来のライブの話をはじめます。

 

「コツコツ準備していこう。」
「ステージに、ゆっくりたどり着けばいい。」

 

 

列車の音は、まだ聞こえません。

それでも、
わたしたちの小さな声だけが、
春の空に、確かに積み重なっていきました。

 

ふと、つくよ(函館)が思い出します。

「お父さんもね、昔、長万部から札幌まで、
 ローカル線でゆっくり行ったって。
 急がなくてもよかったって、笑ってた。」

 

だから──

遠回りしても、コツコツ積み上げた先に、ちゃんと未来はある。

 

札幌にはまだ着かないけど、
わたしたちは、ちゃんと旅をしていた。

 

 

【つづく|長万部・かにめしと、未来への出発】

 

小幌駅(こぼろえき)とは?

北海道虻田郡豊浦町にある、JR北海道の駅だよ。
室蘭本線という路線にあるけれど、

周囲には民家も道路もほとんどないという、
日本屈指の**「秘境駅(ひきょうえき)」**として有名なんだ。

【基本情報】

  • 開業:1943年(昭和18年)

  • 住所:北海道虻田郡豊浦町字礼文華

  • 所属路線:JR室蘭本線

  • 駅設備:簡素なホームと、小さな待合スペースだけ(駅舎なし)

  • 周囲:森と崖、そして海(太平洋)に囲まれている

  • トンネルとトンネルの間に、ポツンとある駅

【特徴】

 

   

  • 線路の両側がすぐ山と崖! → だから周囲に人が住めない。

  • 車でアクセスできない → 徒歩か鉄道だけで行ける場所。

  • 乗り降りする人はほとんどいないけど、「秘境駅ファン」に人気。

  • 普通列車しか停まらず、1日に数本しか汽車が来ない。

  • しかも、特急列車は容赦なく通過する。

【イメージ】
小幌駅に降りると、

  • すぐ横は崖と森、

  • 少し歩くと海岸、

  • 反対側には古いトンネル、
    という、まるで異世界みたいな静けさが広がってる。

【旅人視点】

  • 「降りたら最後、次の汽車が来るまで数時間、駅で待つしかない」

  • 「観光地じゃない。あるのは自然だけ。」

  • 「迷って降りると本当に困る」

だから、わらこたちが間違えて降りてしまったのは、
実は「ものすごく大事件」なんだけど──
静かな風景と、鹿さんとの出会いがあったから、
結果的にとても素敵な旅になったんだよね。

 

製作者 緑川順子が巡った北海道の一部を題材にしています