山我哲雄『一神教の起源ー旧約聖書の「神」はどこから来たのか』(筑摩書房、2013年)
過去に梅原猛など一部の知識人が「西欧はキリスト教、ユダヤ教という一神教を信じているので戦争ばかり繰り返しているが、日本は多神教なので戦争を好まない」という歴史的に全く根拠のない発言を繰り返して来ていたこともあり、「一神教vs多神教」というテーマには関心をもっていたので本書を手に取りましたが、正直がっかりしました。
これは悪い癖なのかもしれませんが、私は小説以外の書籍を手に取ると本文に入る前に必ず、著書によって順序は違いますが「目次」「まえがき」「あとがき」に目を通すようにしています。
今回もそれを実行したところ、まえがきに「本書が、旧約聖書とそこから生まれた一神教的神観を適切に理解するうえで、『多神教的風土』である日本に生きる読者のお役に立つことを願ってやまない」(p.19)とありましたので、大いに期待をしつつ改めて目次を見てあることに気づきました。
それは巻末に「参考文献一覧」も「索引」もないことです。初めは私の見落としかと思い二度見をしたのですが、私の勘違いではありませんでした。本文をパラパラってめくってみると聖書の引用には聖書箇所が明示されていますが、脚注も章末注も一切ありません。
文中にはヴェルハウゼンを初め多くの聖書学者の名前が出てきますが、何の注釈もつけられていないので仮にその聖書学者に興味を持ったとしてもネットで改めて情報を集めなければならないとすれば不便なこと、この上もありません。
また、本文の至るところで断定的なものの言い方をしているようですが、それがご本人の意見なのか、あるいは先達の聖書学者たちからの引用なのかも確認しようがないのです。
一応、学術書の体裁をとっていながら「参考文献一覧」「索引」「脚注」がないという不親切さに呆れてしまい、本文を読み進む気力を全く失ってしまいました。
これは軽い読み物というつもりで著者自身が労を惜しんだのか、編集部が必要ないと判断したのかはわかりませんが、もし再版をされることがあれば改善をしていただきたいと願う次第です。