シンガー・ソングライターのさだまさし氏が無礼がまかり通っている昨今の風潮に「喝ッ!」を入れています。
これは昨日の産経新聞朝刊一面「日曜コラム」にさだ氏が投稿したもの。
さだ氏が真っ先にやり玉に挙げたのは「若い先生」の「高齢者は老害になる前に集団自決、集団切腹でもしたらどうか」という放言です。
この発言はTVの「情報番組」などで良く見かける成田悠輔という人物が2021年にAbema TVの番組で放って物議を醸したものでNYタイムズなのでも取り上げられたようです。
私も最初にこの発言を聞いたときには怒り心頭でした。確かに政界、財界、一般社会を問わず老害としか言いようのない高齢者がたくさんいるのは事実ですが、さすがに「集団自決」は言いすぎだろう、と思ったのです。
ただ、この成田悠輔のプロフィールをみるとYale UniversityのAssistant Professorとなっており、いわゆるtenureは持っていない、つまりYale Universityに教授として定年まで残る保証がされているわけではないということになります。もちろん、このYale UniversityでのステータスがAssociate Professor、Professorと進んでいく可能性もあるのでしょうが、アメリカの大学で生き残るのは並大抵のことではありません。
この過激な発言や左右で形の違うメガネは日本のTV業界で人より目立ち、生き残って行くための一種の方便と考えれば余り腹も立たなくなって来ます。さだ氏は成田氏について「この人の無礼は治るまい」と結論していますが、要するに芸の一種なんでしょうね。
次に、さだ氏はTVのバラエティーはもちろん国会など公の場でも他人に対する言葉遣いが全くなっていないことを嘆いています。そもそも「礼」を知らないのですから、自分たちの言動が無礼であること自体に気づかないのが今の風潮ということになります。
このさだ氏の言葉で思い当たったのが、最近ようやくTVから姿を消したあの女性タレントです。元々は人気YouTuberだったそうですが、歌や演技はもちろんトークもだめ、要するにちょっと奇抜な服装をしてバラエティー番組で「タメ口」をきくだけの存在、共演者も表面上は我慢して「XXちゃん、面白い!」などと口先では言っていても内心、腸の煮えくり返る思いだったことでしょう。度重なる遅刻や暴言でさすがに制作現場としても使いにくくなり、出番が激減したのでしょう。
この女性タレントの場合、TV局や制作会社の幹部が「目立つ格好だし、喋りも今風」と勝手に解釈した、つまり先ほどの成田氏と同様、自分は若者の立場を理解しているつもりだったのでしょう。しかし、実際には若者の支持がなかったことは「嫌いな女性タレント」でいつも第一位になり、TV局やタレント本人にとって死活問題であるCM出演が少なかったことでも分かります。というより、そもそも若者はTV自体を観ないんですけどね。
本コラムの後半でさだ氏は今春、ある出版社からさだ氏に相談も無く「さだまさしの詞集」らしきものが出されたというエピソードを紹介しておられます。出版にあたってはさだ氏の許諾はもちろん得ていないし、収録されている歌の題名や歌詞に誤字も多いことから出版差し止めの申し入れをしているところとのことです。
これなど無礼を通り越して犯罪的な行為だと思いますが、こうした行為は程度の差こそあれ出版業界や放送業界では案外まかり通っているようです。
だいぶ以前ですが、数量政策学者・高橋洋一氏が体験談をご自身のYouTube動画で語っておられました。
高橋氏が某TV番組の制作担当者から電話で取材を受けた時のこと、質問された内容についてけっこう丁寧に答えると先方は高橋氏に出演依頼や電話取材のギャラの話をするわけでもなく電話を切りました。高橋氏も不審には思いましたが、それから暫くして、ある特番で有名ジャーナリストが以下にも自分で取材したかのように滔々と高橋氏が電話で話したのと同じ内容を語っていたそうです。
この場合はたまたま「被害」に合われた高橋氏のYouTubeが登録者数と再生数の多いものであり発言力が大きかったために明らかとなったのですが、似たようなケースはざらにありそうですね。
日ごろは社会の木鐸や社会の良識を自ら任じているTV業界や出版業界がこの有り様ですから、日本全体が「『無礼』の時代」に陥るのも無理はないかもしれません。