【中心聖句】
彼は永遠にヤコブの家を治め、その支配は終わりことがない。(33節)
今日、待降節第四主日の福音朗読箇所はルカによる福音書1章26〜38節です。
新共同訳の見出しに「イエスの誕生が予告される」とあるように、この箇所は「受胎告知」として大変に有名です。
ここに書かれているストーリーはよく知られていますので、改めてご紹介することはせず、雨宮慧神父に倣って上に掲げた33節の言葉を学ぶことにいたしましょう。
ここには治めるβασιλεύω、支配βασιλείαという言葉が出てきます。これらはいずれも王βασιλεύς(ヘブライ語מֶלֶךְ)からの派生語です。
王βασιλεύςというと通常、ネブカドネ゙ツァル(新バビロニア)やルイ14世(フランス)、フリードリヒ二世 (プロイセン)などの絶対的な権力を持った君主を思い浮かべます。
しかし、旧約聖書において規定されている王は彼らとは全くちがっています。
申命記17章14節以下には「王に関する規定」が書かれていますが、その結びとして
王は同胞を見下して高ぶることなく、この戒めから右にも左にもそれることなく、王もその子らもイスラエルの中で王位を長く保つことができる(20節)
とされているのです。
その子は偉大な人になり、いと高き方のこと言われる(32節)
と天使ガブリエルがマリアに告げたイエスは民衆や弟子たちの期待に反し、エルサレム神殿の大祭司やローマから任命された総督にとって替わる支配者にはなりませんでした。
彼は終わりのない支配のために十字架を背負った(雨宮慧『主日の福音ーB年』p.28)
のでした。
参考文献:
雨宮慧『主日の福音ーB年』(オリエンス宗教研究所)