沖田臥竜『迷宮「三大未解決事件」と』(2020年9月20日、株式会社サイゾー)

 

 

 

これまで三回にわたって本書についてご紹介して来ました。

 

ここに書かれている「三大未解決事件」「三つの怪事件」のうちの二つの事件はいずれも大変に興味深い事件です。

 

興味深い事件、といっては被害に遭われて命を落とされたり酷い怪我をなさった方々やご親族の皆さんには誠に申し訳ありません。

 

そのことをお断りした上で、最後にご紹介するのは実は本書で一番最初に書かれている「事件」です。

 

ごく簡単にその「事件」について本書に書かれている経緯をご紹介します。

 

今から17年前の2006年4月、東京の文京区に在住のA子から「夫が死んでいる」という110番通報が入りました。

 

管轄の警視庁大塚署の警察官が駆けつけてみると1階リビングにA子の夫Bが血を流して死んでおり、側に血の付いた包丁が1本置かれていたのです。

 

死亡していたB氏の血液中からは薬物の成分が発見されましたが、当時彼は風俗店の店長を務めており知人たちから借金を重ねていました。

 

実はA子は110番通報すると同時に「知人」のCにも電話をし、自宅に来るように依頼していました。A子からの電話を受けたC氏はA子宅に駆けつけました。

 

警察は当初、このC氏がB氏の殺害犯ではないかとの疑いで捜査をしましたが、結局、逮捕の決め手となる証拠や供述が得られなかったため、結局、様々なトラブルの渦中にあった彼が自殺を図ったのが濃厚という判断がされました。

 

ところが12年後の2018年になって、ロッカーの中に放置されていた昔の捜査書類、いわゆる「コールドケース」に目を止めた一人の刑事がこの事件の経緯に「ひっかかり」を覚えました。

 

「人が自ら死を選ぶ時に、右の頸動脈をひと思いに切るという手段をとるだろうか」という刑事の直感による疑問をいただいたのが、再捜査の始まりでした。

 

新しい捜査陣が特に注目したのが、110番と同時にA子が電話をし、当初の捜査でも疑惑の目が向けられたC氏でした。

 

再捜査が始まった当時、実はC氏は薬物関連の事件で実刑判決を受けてM県内の刑務所に収監されていました。

 

その捜査関係者がM県に何度も足を運んだ結果、「A子から『夫を殺してしまった』という電話があって駆けつけた」という話を引き出しました。

 

捜査員が警視庁捜査一課に経緯を報告し、本格的な捜査が始まりましたが、何しろ12年も前の事案でB氏の遺体も当然ながら遺っておらず、唯一の鍵はC氏の証言でした。

 

何しろ薬物関係で服役中の人物の証言だけでは逮捕・起訴に持ち込んで公判を維持するのは難しいため、A子の周辺を再び徹底的に洗うことになりました。

 

捜査関係者はA子に複数回にわたって事情聴取を求めたほか、A子の実家への家宅捜索まで行いました。

 

ところがどうしてもA子から具体的な供述を引き出すことができなかったばかりか捜査はここで大きな壁にぶち当たることになります。

 

というのも実はA子はB氏の死後、ある業界の大物と再婚していました。この夫の存在によりA子をそれ以上、追求することが難しくなってしまったようなのです。

 

この一件がやがて業界の超大物、「影のドン」の耳に入り、この超大物はダメージコントロールとしてA子の夫に離婚を勧めたと言われています。

 

本書はこの事案について

 

A子を逮捕するには彼女自身が認めるしかないが、本人は一貫して否認しており捜査は難航していると言われている...嘘のような本当の話だが、これも未解決のまま残っている一つの事件の話だ

 

と結論しています。

 

以上が著者が伝える事件のざっとした経緯です。

 

 

(続く)