沖田臥竜『迷宮「三大未解決事件」と「三つの怪事件」』(2020年9月20日、株式会社サイゾー)
書名にある通り本書は今なお語り継がれ、折に触れてメデイアでも取り上げられる「三大未解決事件」と、それに匹敵するような怪事件を題材として取り上げています。
著者は、表紙帯によれば「裏社会や警察事情にも精通する気鋭の作家」である沖田臥竜氏。
沖田臥竜氏は「裏社会に精通」とあるようにネット情報によると元々は暴走族から日本でも最大な反社会勢力の一員となった人物とのことです。
筆者自身によると「未解決事件」とのそもそもの出会いは1993年7月7日、筆者が17歳の時に兵庫県尼崎市で起こった少女刺◯事件とのこと。
暴走族の一員であった彼のところにも聞き込みの刑事が訪れ「この男らを見たことはないか」かと何枚かの写真を見せられました。
当時、マスコミの報道や世間の風評は「暴走族絡み」の事件というスタンスでしたが、実際に彼が見せられたのは30代後半と思しき「パンチパーマの柄の悪い男」の写真だったそうです。
つまり警察はマスコミや世間とは全く違う犯人像の人物を追っていたのですが、残念ながらこの事件は15年後の2008年に時効を迎えてしまいました。
さて、書名にある「三大未解決事件」とは平成に起こった
世田谷一家殺害事件
八王子スーパーナンペイ事件
柴又・女子大生放火殺人事件
の3つを指しています。
いずれも大変に良く知られた未解決事件であり、これまで新聞TVや雑誌あるいは単行本で大変に数多く取り上げられてきています。
ですので、本書で書かれていることも大半は特に目新しい情報ではないので、ここでは一つひとつは取り上げません。
むしろ興味深いのは「三つの怪事件」です。その三つとは
文京区変死事件
足立区強盗殺人事件
歌舞伎町雑居ビル火災
です。
足立区強盗殺人事件では2002年の事件発生から実に16年経ってある男が突然、浅草警察署に自首し、犯人しか知り得ない事件の内容を口にするという、いわゆる「秘密の暴露」を行いました。
ところが、男の精神状態が極めて不安定であったため、一旦は精神科病院への入院を勧め、体調や精神状態の回復に関する医師の判断を待って強盗殺人と住宅侵入の罪状で逮捕状を執行したというのです。
逮捕後、被疑者が動機や犯行前後の足取りなどを自ら詳しく供述したため事件の全体像が明らかになり一つの「コールドケース」がいちおう解決したのでした。
これは逆に言うと、もし被疑者の供述が無かったら、この事件は「コールドケース」としてそのまま闇の中に消えて行ったということになります。
被疑者の供述によると
空腹と寒さに耐えかねていた。包丁を片手に片っ端からインターホンを押して人を襲って、金を奪おうと思った
ということ、要するに「誰でも良かった」わけです。
そして、ちょうど外出しようとドアを開けた被害者(当時23歳)はこの容疑者と運悪く鉢合わせをしてしまったのでした。
容疑者は被害者に切りつけてフライパンで頭を殴って殺害した上、バックパックから財布を奪って逃走したのです。
英語に”be in the wrong place at the wrong time" という表現があります。直訳すれば「いるべきではない場所に折悪しくいてしまう」ということになります。
この被害者の場合も玄関先に出てくるのが後1分遅ければ、あるいは5分早く外出していれば命を落とさずに済んだかもしれません。
この事件は今年1月に最高裁で被告の無期懲役が確定しましたので、いちおう完全に解決したということはできます。
しかし被害者の遺族にとっては「わたしの家族がなぜ殺されなければならなかったのか」という疑問は一生残るものでありましょう。
(続く)