小林登志子『古代メソポタミア全史 シュメル、バビロニアからサーサーン朝ペルシャまで』(中公新書、2020年11月20日3版)

 

本書は副題にもあるように、BCE3500~3100年に「ウルク文化期」を築いたシュメルからCE651年に「サーサーン朝」が滅亡するまでの4000年、そして地理的にはインダス川西岸地域からエジプトに至る「古代オリエント」の中でもチグリス・ユーフラテス川流域の地帯、現在の国でいえばイラン南部、イラク、クウェート、シリア東部などが含まれる一帯の歴史です。

 

あとがきに書いてあるように著者自身はシュメル史がご専門ですが、この「古代メソポタミア」全体の歴史的流れを俯瞰できるような入門書が必要との立場から本書を書かれました。

 

本書はいわゆる数か所の「カルチャーセンター」で行った講義を元にしているとのことです。

 

ですので、カラーの口絵の他、「古代オリエント」の地図、様々な出土品の画像なども豊富に挿入されていて興味を持って読み進むことが出来ます。

 

著者の専門である「シュメル史」については別の著作がありますので、その時に詳しく触れたいと思いますが、「ノアの洪水」「ギルガメッシュ叙事詩」に詠われたチグリス・ユーフラテスの大洪水に基づいているというのは良く知られていますね。

 

シュメルからアッカド、そしてアッシリア、バビロニア、新バビロニア、アケメネス朝ペルシャ、そしてアレクサンダー大王、ローマ帝国へと時代が下っていきますが、特に日ごろから旧約聖書に親しんでいる人であれば、アッシリアやバビロニア、ペルシャは良く目にする国名ですし、新約聖書の「ヨハネの黙示録」ではバビロンが象徴的に出てくることはご存じのとおりです。

 

新書というかなり限られたスペースですが、巻末の索引や図版引用文献、主要参考文献も充実していますので、ここから更に自分なりの研究を深めたい場合にはうってつけです。

 

特に旧約聖書を読む場合には傍らに置いておきたい一冊といえましょう。