あなたの不滅の霊がすべてのものの中にある(12章1節)

 

 

本日の旧約聖書朗読も続編の「知恵の書」からです。

 

この「知恵の書」はBCE一世紀にエジプトのアレキサンドリアにおいてギリシャ語で書かれたとされています。

 

本書は大きく次の三つに分けることができます。

 

1~6章   知恵と人生

7~9章   知恵の本質

10~19章  イスラエルの歴史における知恵の働き

(『主日の聖書解説<C年>』)

 

BCE1世紀前半にはセレコウス朝(シリア)からの独立を勝ち取ったユダヤ人の王朝であるハスモン朝がイスラエルを統治をしていました。

 

しかし、王朝内部や国内の権力闘争などによって世情は極めて不安定でした。

 

そういう状況下で今日の朗読箇所では

 

イスラエルの民が荒れ野の旅で体験した神の忍耐と愛を語ることによって、神への信頼を今も保つように

 

と説かれているのです(同上)

 

世情が極めて不安定な中では多くの人々が刹那的なライフスタイルをとったり、自暴自棄に陥ったりしても不思議はありませんね。

 

彼らの伝統的なユダヤの信仰も揺るいでいたことでしょう。

 

そこで、知恵の書

 

荒れ野の旅での出来事を思い起こさせ、神の忍耐を強調

 

したのでした(同上)

 

この「荒れ野の旅」がモーセをリーダーとした「出エジプト」であることは今更いうまでもありません。

 

26節には

 

あなたはすべてをいとおしまれる

 

とあります。

 

「いとおしむ」の原語はφείδομαι(フェイドーマイ)です。

 

念のためですが、旧約聖書続編はギリシャ語で書かれています。

 

BCE一世紀になるとアレキサンドリアなどイスラエルの外に住んでいた一般のユダヤ人はヘブライ語の読み書きが出来なくなっていたということでしょう。

 

このφείδομαιには

 

1.惜しむ、大切にする、容赦する

2.差し控える、やめる、断念する

 

などの意味があります(『新約ギリシャ語辞典』)

 

つまり、存在するものすべてを愛するがゆえに(24節)、神は悪人であっても直ちに滅ぼすことは「差し控えている」ともいえるのです。

 

しかしながら、ハスモン朝はローマ帝国の保護下に入り、最終的にイスラエル全体がローマ帝国の「ユダヤ属州」となったのでした。

 

(えんじ:ローマ帝国 赤:ユダヤ属州)

 

 

参考:

 

雨宮慧『主日の聖書解説<C年>』教友社

   『図解雑学 旧約聖書』ナツメ社

岩隈直『増補改訂 新約ギリシャ語辞典』山本書店