そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造りあげられた(22節)
ミケランジェロ『エバの創造』
旧約聖書の創世記を読み始めるとすぐに気が付くことですが、
1章1節~2章4節前半
2章4節後半~25節
の2回、「天地創造」物語が出て来ます。
しかも単に2回出て来るだけではなく、内容的にも矛盾があることにも気が付きます。
今日のテーマとの関連で見ますと、男女の創造について
1章27節: 男と女が同時に創造された
2章21~22節: 男の後に女が創造された
と記されています。
詳しい解説は割愛させていただきますが、旧約聖書学では
1章1節~2章4節前半:
BC500年頃にバビロン捕囚下で作成されたとする祭司資料(P資料)
2章4節後半以下:
BC950年頃、ソロモンの宮廷で作成されたとするヤヴィスト資料
(J資料)
と、2つの物語の成立には約450年の隔たりがあるというのが定説となっています。
またまた前置きがだいぶ長くなってしまいましたが、今朝の箇所からは3つの言葉を学びます。
神は
人が独りでいるのは良くない (18節)
と考え、
彼に合う助ける者を造ろう(同)
と言います。
まず、ここで「合う」と訳されている言葉は
ヘブライ語の「ネゲド」で元々は「前に」「近くに」「反対側に」
などを意味する前置詞です。
ですから、これは「彼に合う助ける者」とは、すなわち
アダムの目の前にあって、互いに完全な者となるための相方(雨宮慧神父)
ということになるでしょう。
「彼に合う者」ではニュアンスとして少し不十分ですね。
新しい聖書協会共同訳では
彼にふさわしい助け手
と直されていますが、これでもどうでしょうか。
次に、「助け」という言葉の原語「エーゼル」は動詞「アーザル」から派生した名詞です。
この言葉は
主に神からくる助けを表します(『主日の聖書解説<B年>』)
男の目の前にある女は「神から来る」対等の存在ということになるでしょう。
そして、3番目は「深い眠り」(21節)という言葉です。
人を深い眠りに落とした後、神は人のあばら骨の一部を抜き取った(同)
というのですから、現代風に考えれば、大手術の前に全身麻酔をかけた、という身も蓋もない話になってしまいます。
ですが、ここでの「深い眠り」(原語ターデマー)とは
神が目的を実現するために関与した深い眠り(『主日の聖書解説<B年>』)
なのでした。
日ごろ旧約聖書に親しんでいる人ならば「深い眠り」という言葉からすぐに神がアブラム(のちのアブラム)と契約を結んだ時、
日が沈みかけたころ、アブラムは深い眠りに襲われた(創世記15章12節)
と記されているのを思い出すことでしょう。
神との契約はアブラムが深い眠りに落ちている間に神がアブラムの所に来ることによって成されたのでした。
今日の聖書箇所について雨宮慧神父は以下のように言っておられます。
男と女は向かい合うことによって、真の助けは自分たちを造った神から来ることを知るように造られたのです。(『主日の聖書解説<B年>』)
参考:
雨宮慧『主日の聖書解説<B年>』教友社
『図解雑学 旧約聖書』ナツメ社
大貫隆他『岩波 キリスト教辞典』岩波書店
