#01はじまりのはじまり

 

廊下を歩く。

 

自分の教室から出て階段を登る。迷いなく、頭に体から信号を送る。校舎の最上階にたどり着き、ひとつ…ふたつ…と教室の扉を見送る。三つ目の教室の前で立ち止まる。呼吸を整えて、心拍数を落ち着ける。

 

ガララララ

 

立て付けの悪い扉を開けて教室に入ると、ゆったりお茶を飲んでいるちょっとイタいオカルトガールがいた。

 

「秘封倶楽部の菫子さん。ご機嫌麗しゅう?」

 

「おや、秘封倶楽部の葵さんじゃない。いやはや。ここまで晴れてしまうと私の趣味。もとい、オカルト研究がやりにくいのよね~。」

 

「お茶を啜って空を見てなにが研究なのかしら。」

 

「天体観測よ。」

 

「見えないのに?」

 

「みえないからよ」

 

読みかけの本を開きながら目の前のパートナーの変な言い訳じみた言葉を紅茶で受け流して相槌を打つ。

 

「ペットボトルの紅茶って美味しいの?」

 

「おいしくないわけではないけれどって感じね」

 

一息をついて窓越しの空を見上げ、美味しくはない紅茶を啜る。少し甘すぎるような人工甘味料に舌鼓を打ちながら浮くような眠気に飲み込まれる。

 

それから引きずりだしたのはパートナーの机を叩く音だった。

 

「こんな事をしている場合じゃないのよ!!! 私たちはオカルト系部活よ!」

 

 そうだ。私達は泣く子も黙る実践型オカルト系部活 秘封倶楽部。

「大した活動は特にしていないけれど。」

「ふっふっふ( ΦωΦ )甘いわね葵!

今回は実際に課外活動よ。初のね!」

「お、菫子にしては用意周到じゃない。」

「私もたまには気合いぐらい入れるわよ」

 

近い。顔が近い…こんなにテンション高い菫子は初めて見た。かく言う私もちょっと楽しみになってきた。

「で、どこ行くの?」

「博麗神社よ」

「博麗神社?」

「噂に名高いオカルト神社よ。鬼がいたり小人がいるとか、亀がいるとか」

「博物館じゃない」

「まぁ、全部伝説だけどね」

「というか、今日!?」

「今日よ。当たり前じゃない。善は急げ。早起きは三文の徳よ。」

「急がば回れという言葉もあるのをご存じない?」

「ご存じないわ。私の辞書にはないみたい。」

「その辞書、編者があぶくを吹いて倒れるわよ。」

「倒れて結構。ここでは私がルール!世界の秩序よ!」

「では神様、今後どのようになされるおつもりで?」

そこで、菫子は部屋にあった時計を見た。というかほぼ睨みつけている。

現在時刻16:00

 

「このまま、博麗神社に移動!お金はある?少し電車移動するわよ。」

 

随分と急ぐ予定だなと思っていると、なんとなく相方のしたいことがわかってきた。高校になってからのパートナーだとはいえやはり自分の相方なのだと感じた

 

「逢魔が時ね?」

「ご名答。」

正解のジェスチャーというように人差し指をくるくると回す。

 

逢魔が時。平たく言えば夕方の薄暗くなる時間帯。昔の日本では日の出ている時間が『人』の時間。出ていない時間が『妖』の時間だった。そしてその間の時間、夕方を『逢魔が時』と言った。『人』の時間と『妖』の時間が曖昧になる、そうするとオカルト的・霊的現象が起きやすい。我々にとってはベストな環境

なのだ。

「というわじぇで」

「あ、噛んだ」

「うるさい!!善とオカルトは急げ!『秘封倶楽部会長、宇佐見菫子!』

泣く子も黙る本当の超能力者よ!!」

相方は黒い中折れ帽子を被り赤縁のメガネを掛けた格好で颯爽と部屋から出ていった。

「もうちょっとちゃんと出て行けないものかしら」

 

『普通の人間。白根葵』は後を追うように床を蹴った。

 

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「何この夢…」

マエリベリー・ハーンは混乱している。