#08 Alive-別れの歌-
あのメッセージを受け取ってから、2週間。
オレは当然ながら、あの想いには応えることは出来なかった。
…彼女が他人に対して、感情を表に出してくれたことは、嬉しかったけれど。
…いじめられて、世界を信じられなくなって、そこで現れたやつに救われて、恋に落ちる。
オレと小鳥遊が経験したのは、そんなおとぎ話にも似たストーリー。
ただ、オレと彼女のストーリーで少し違うのは、オレは、彼女を傷つけて、すべてを終わらせて消えていく、ということ。
…オレは、あれ以降、彼女との連絡を断つことにした。
気づいてしまったのだ。
あいつのような、純真無垢な少女が、真人間に戻れそうになってきたところで、ひねくれ者から変われそうにない、オレに恋をしちゃいけないことを。
オレはどうせ必要悪でしかない。
…だから、オレはただ、あいつを救って、彼女の前から消える。
入学式の日から、彼女がどれだけオレのことを思ってくれていたか知らない。
でも、彼女にとっての失恋の傷をえぐりながら、友達として彼女とずっと接して、傷つけていくよりも、オレがあいつの前から消えて、すべてまっさらな状態に戻って、いつかまた会った時に、笑って会えた方がいい。
…結果的に、傷つけてしまうかもしれないけれど、彼女の泣き顔なんて、見たくもないから。
…だから、消えるんだ。
許してくれ、小鳥遊。
それからは毎日、放課後、喫茶店で琴音と顔を合わせ、あいつを毎日いじめているやつらを特定して、ふたりでボコボコにしてやろうという魂胆のもと、打ち合わせを重ねていった。
そのなかで、琴音から、オレがつばさに会いに行っていた間に、小鳥遊とお茶をしたことを耳にした。
会話はもちろんLINEだったそうである。
そのなかでも、小鳥遊の目の色の話と、入学式の日に出会った彼女の母親の話。
オレが気になっていたその2つに関して、琴音はあることを小鳥遊から聞いたらしい。
「あの子…、父親の連れ子らしいの」
「…つまり、小鳥遊の実の両親は離婚していて、父親がそのあとに再婚しているってことか?」
「うん。離婚自体は小さい頃の話みたいなんだけど、やっぱり、あのお母さん、ちょっとおかしいよ…。さくらちゃんのこと、受け入れてないみたい」
なんとなく、その言葉にシンパシーを感じたのは、たぶん、愛情に飢えていたオレだからなのだろう。
あの目の色のことも、それなら説明がつく。
あいつはおそらく、そして、その母親もおそらく、双方の存在を認めあっていない。
小鳥遊は受け入れようとして、努力をしているに違いない。
…現に、あいつはオレに話しかけてきた。
…打ち明けるのに勇気のいるようなことも、打ち明けてくれた。
あいつは、少なくとも自分の周りの変化についていこうと必死に頑張っている。
そう考えて、改めて、そうして頑張っているやつをいじめるやつがいることに、オレは激しく憤った。
…やると決めたら引き下がれないし、引き下がらない。
やってやる…!!
あいつの可能性を潰してたまるか!!
ふとした瞬間、黙り込んだオレと琴音。
沈黙はだんだんと決意に変わっていった。
そして、ある日の放課後のこと。
オレと琴音は小鳥遊の机にとある書き置きを残し、さらに『最強の助っ人』を伴って、決戦に挑んだ。
《Alive!!》
まだ誰もいない教室で、どぎついくらいの赤色のマジックを使って、メモ用紙に書きなぐったその言葉は、オレと琴音、さらにはつばさや、『最強の助っ人』の総意だった。
生きろ、小鳥遊。
オレがお前の不安を消し去ってやる。
それと同時にオレも消えるけど、いつかまた出会えたときには、笑って会おう。
またな、小鳥遊。
―オレはそれを書き終えたら、くるりと背を向けて、さっぱりした気持ちで決戦に臨むはずだったのだが、気付くとオレは泣いていた。
けれど…、その涙の止め方を、オレは知らないのだった。
(つづく)
あのメッセージを受け取ってから、2週間。
オレは当然ながら、あの想いには応えることは出来なかった。
…彼女が他人に対して、感情を表に出してくれたことは、嬉しかったけれど。
…いじめられて、世界を信じられなくなって、そこで現れたやつに救われて、恋に落ちる。
オレと小鳥遊が経験したのは、そんなおとぎ話にも似たストーリー。
ただ、オレと彼女のストーリーで少し違うのは、オレは、彼女を傷つけて、すべてを終わらせて消えていく、ということ。
…オレは、あれ以降、彼女との連絡を断つことにした。
気づいてしまったのだ。
あいつのような、純真無垢な少女が、真人間に戻れそうになってきたところで、ひねくれ者から変われそうにない、オレに恋をしちゃいけないことを。
オレはどうせ必要悪でしかない。
…だから、オレはただ、あいつを救って、彼女の前から消える。
入学式の日から、彼女がどれだけオレのことを思ってくれていたか知らない。
でも、彼女にとっての失恋の傷をえぐりながら、友達として彼女とずっと接して、傷つけていくよりも、オレがあいつの前から消えて、すべてまっさらな状態に戻って、いつかまた会った時に、笑って会えた方がいい。
…結果的に、傷つけてしまうかもしれないけれど、彼女の泣き顔なんて、見たくもないから。
…だから、消えるんだ。
許してくれ、小鳥遊。
それからは毎日、放課後、喫茶店で琴音と顔を合わせ、あいつを毎日いじめているやつらを特定して、ふたりでボコボコにしてやろうという魂胆のもと、打ち合わせを重ねていった。
そのなかで、琴音から、オレがつばさに会いに行っていた間に、小鳥遊とお茶をしたことを耳にした。
会話はもちろんLINEだったそうである。
そのなかでも、小鳥遊の目の色の話と、入学式の日に出会った彼女の母親の話。
オレが気になっていたその2つに関して、琴音はあることを小鳥遊から聞いたらしい。
「あの子…、父親の連れ子らしいの」
「…つまり、小鳥遊の実の両親は離婚していて、父親がそのあとに再婚しているってことか?」
「うん。離婚自体は小さい頃の話みたいなんだけど、やっぱり、あのお母さん、ちょっとおかしいよ…。さくらちゃんのこと、受け入れてないみたい」
なんとなく、その言葉にシンパシーを感じたのは、たぶん、愛情に飢えていたオレだからなのだろう。
あの目の色のことも、それなら説明がつく。
あいつはおそらく、そして、その母親もおそらく、双方の存在を認めあっていない。
小鳥遊は受け入れようとして、努力をしているに違いない。
…現に、あいつはオレに話しかけてきた。
…打ち明けるのに勇気のいるようなことも、打ち明けてくれた。
あいつは、少なくとも自分の周りの変化についていこうと必死に頑張っている。
そう考えて、改めて、そうして頑張っているやつをいじめるやつがいることに、オレは激しく憤った。
…やると決めたら引き下がれないし、引き下がらない。
やってやる…!!
あいつの可能性を潰してたまるか!!
ふとした瞬間、黙り込んだオレと琴音。
沈黙はだんだんと決意に変わっていった。
そして、ある日の放課後のこと。
オレと琴音は小鳥遊の机にとある書き置きを残し、さらに『最強の助っ人』を伴って、決戦に挑んだ。
《Alive!!》
まだ誰もいない教室で、どぎついくらいの赤色のマジックを使って、メモ用紙に書きなぐったその言葉は、オレと琴音、さらにはつばさや、『最強の助っ人』の総意だった。
生きろ、小鳥遊。
オレがお前の不安を消し去ってやる。
それと同時にオレも消えるけど、いつかまた出会えたときには、笑って会おう。
またな、小鳥遊。
―オレはそれを書き終えたら、くるりと背を向けて、さっぱりした気持ちで決戦に臨むはずだったのだが、気付くとオレは泣いていた。
けれど…、その涙の止め方を、オレは知らないのだった。
(つづく)