10. 第23条A及び第23条B(二重課税除去の方法)
第23条A第1項及び第23条B第1項は、二重課税の救済義務は他方の締約国が源泉地国又は所在地国として課税した場合に生じることを明確にするため、条文が変更されました。また、この原則を説明するため、コメンタリーに事例を追加しています。これは、BEPSプロジェクトの行動 6の最終報告書を反映したものです。
11. 第25条(相互協議)
第1項では、納税者に相互協議の機会を保証するため、相互協議の申立てを居住地国だけでなくいずれの締約国に対しても行えるよう改正されました。これは、BEPSプロジェクトの行動 14の最終報告書の結論に基づくものです。さらに、同最終報告書で提起された問題(権限のある当局の合意の位置づけ等)に関して、コメンタリーが追加又は改正されています。
第5項(仲裁規定)は、仲裁に付託できる2年の期間の起算日が、権限のある当局が要請した全ての情報が両締約国の権限のある当局に提出された日に変更され、仲裁の要請は書面にて行うことが明記されました。また、コメンタリーの「仲裁に関する二国間合意モデル」は、多数国間協定の仲裁規定 を反映して、大幅に変更されています。
12. 第29条(特典を受ける権利)
2017年改正で、BEPSプロジェクトの行動 6の勧告 に基づき、第29条(特典を受ける権利)が追加されました。
第1項から第7項は、特典制限規定(LOB)で、租税条約の特典の付与を一定の要件を満たす主体に制限しています。
第8項は、第三国の恒久的施設を利用した濫用を防止するための規定で、当該第三国で免税又は優遇措置を受ける所得に条約の特典を認めないことを規定しています。
第9項は、取引又は仕組みの主たる目的に着目した一般的濫用防止規定(PPT)で、特典制限規定で対象とならない条約漁りを含むその他の条約の濫用に対応しています。