2. 第26条(情報交換)第1項のコメンタリーの改正
第1項では、条約の規定の実施又はすべての種類の租税に関する国内法令の執行及び実施に「関連する(foreseeable relevance)」情報を交換すると規定しています。2012年のコメンタリー改正では、情報を要請する際の「関連する」の基準、そしてこの基準を満たさない「単なる証拠の収集(fishing expedition)」に関して、解釈の明確化を行い、判断のための事例を追加しています。
(1) 「関連する」情報の解釈
「関連する」の基準は、可能な限り広範囲な租税関連情報を提供することを目的としています。2012年のコメンタリー改正では、その目的に沿って、「関連する」の基準について以下の解釈を追加しています。
l 「関連する」の基準は、要請をする時点で関連すると予見できる合理的可能性があることを求めているのであり、提供された情報が実際に関連していたかどうかは重要ではない。したがって、情報を受領した後でないと情報が進行中の調査に関係があることが明確に判断できない場合には、被要請国は要請を拒否できない。
l 被要請国が要請された情報と進行中の調査等との関連性が分からない場合、両権限ある当局は協議すべきである。しかし、要請国が要請した情報の関連性についての説明を被要請国に提供した場合には、被要請国は、情報は進行中の調査と関連性を欠くと考えるとしても、要請を拒否する又は要請された情報を保留することはできない。
l 被要請国が、要請された情報の一部についてその関連性を疑う事実に気付いた場合には、要請国にこの事実を踏まえた上で関連することを明確にするよう求めることができる。
(2) 「単なる証拠の収集」の解釈
「関連する」の基準は、また、「単なる証拠の収集」に該当する情報の要請ができないことを明らかにすることも目的としています。「単なる証拠の収集」とは、特定の納税者の税務問題との関係が明らかでない情報を要請することを指しています。2012年のコメンタリー改正では、この「単なる証拠の収集」の解釈を追加しています。
l 要請に調査対象の納税者の名前若しくは住所(又は両方)を提供しないというだけで「単なる証拠の収集」となるわけではない。しかし、要請国は、これらを提供しない場合には、納税者を特定できる十分なその他の情報(例えば、口座所有者が特定できない口座情報を要請する場合、口座番号又は類似の個人特定のための情報)を提供しなければならない。
(3)
納税者グループ(a group of taxpayers)の情報要請
ある金融商品の投資家情報や銀行の口座情報のように、個人が特定されていない納税者グループ(a group of taxpayers)に係る情報を要請する場合、要請が「単なる証拠の収集」ではないことを証明するのは難しくなります。2012年のコメンタリー改正では、納税者グループの情報を要請する場合の留意点を追加しています。
l 納税者グループの情報を要請する場合、要請国は、当該グループ及び要請に至った具体的な事実と状況についての詳細な説明、適用法令の説明並びに当該グループの納税者が法令を順守していないと信じる理由を明確な事実に基づき提供する必要がある。さらに、これら納税者グループが法令順守をしていないことに第三者が積極的に寄与している場合には、その状況についても要請に記載すべきである。
(続く)