(8)  相互協議手続の改善に関する規定(第16条)

 

 MLI第16条は、各租税条約の相互協議の規定を、2017年OECDモデル租税条約の第25条第1項から第3項の規定に置き換えるための規定です。

 

 第16条第1項第1文は、相互協議の申立てを居住地国だけでなく「いずれの」締約国に対しても行えることを規定しています。我が国は、居住地国でのみ相互協議の申立てができる租税条約の規定に代えて、又は当該規定のない租税条約に、本規定を適用することを選択しています。署名時の通告では、相互協議の申立ての規定を有する租税条約として全ての対象租税協定をリストアップしていました。受諾書の寄託時の通告では、相互協議の申立ての規定を含む対象租税協定のリストにアラブ首長国連邦、ウクライナ(旧ソ連邦)、エジプト及びカザフスタンとの租税条約を追加し、フィジーとの租税条約をリストから削除しています。

 

 第16条第1項第2文は、相互協議の申立ては課税に係る措置の最初の通知の日から3年以内に行うことを規定しています。我が国は、申立の期間期限についての規定のない租税条約に本規定を適用することとしていますが、受諾書の寄託時の通告により、エジプトとの租税条約にも第1項第2文が適用されることとなります。

 

 第16条第2項第1文は、両締約国の権限のある当局が協議し事案を合意により解決するよう努めることを規定しています。受諾書の寄託時の通告により、租税条約にこの規定を含まないフィジーとの租税条約に第2項第1文が適用されます。

 

 第16条第2項第2文は、成立した全ての合意は両締約国の法令上のいかなる期間制限にもかかわらず実施されなければならないことを規定しています。受諾書の寄託時の通告により、租税条約にこの規定を含まないエジプトとの租税条約に第2項第2文が適用されます。

 

 第16条第3項第1文は、権限のある当局は、租税条約の解釈又は適用に関して生ずる困難又は疑義を合意によって解決するよう努めることを規定しています。受諾書の寄託時の通告により、租税条約にこの規定を含まないフィジーとの租税条約に第3項第1文が適用されます。