室内の闘争 | ◆今夜も枕投げ◆

室内の闘争

東宝
笑の大学 スペシャル・エディション

 久しぶりに、素直に面白いと言える邦画を見た。

 昭和15年、戦争真っ只中の中、検閲官である向坂(役所広司)と、喜劇作家の椿(稲垣五郎)が、一つの脚本を巡って繰り広げるコメディ。場面の殆どが、一つの室内で行われるというところに、脚本家である三谷幸喜の出身である舞台っぽさが出てると思ったら、96年に実際賞を受賞した事もある、それはもう立派な舞台劇だった。

 会話がメインで話が進んでいく話だけに、両者の台詞の巧みさといったら本当に舌を巻くほどで、その台詞一つ一つの情報量に感服。一流の脚本家は仕事が違う。こういった、面白い台詞というのが書けるのは、それだけキャラクターをしっかり作り上げているからこそ出来るのだろう。

 演じきっている二人の実力もまたすごい、特に役所広司の演技力は、まさしく神業。複雑で頑固な向坂が、少しずつ笑いを理解し、楽しみはじめていく感情の移り変わりを、極めて自然にこなした。本当に素晴らしい。

 この向坂というキャラクターは、造詣上陥りやすい、頭の悪いキャラクターというものになってない。というのが脚本家の実力を感じさせた。主人公、この場合では椿の事をあらわすが、それと敵対するものというのは、大概の場合、どこかしら思考に弱点がある場合が多く、殆どの場合その弱点をついて主人公が切り込むという、パターンを踏むのだが、向坂の場合、そういう弱点は殆ど無く、寧ろ頭の良いキャラクターになっている。そこを椿は、巧みに会話を使い、本を使い、向坂に合わせた笑いを作っていく。そういった、笑いを武器に世間と戦う。しかし笑いで戦うというのは相手を叩きのめしたりするのではなく、相手をも笑わせる事が、本当に笑いで勝つという事なんだと、そういうメッセージをこの映画からは感じる事ができた。


 そのうちこの映画は自分でDVDを買おうと思う。それほどまでに面白い映画だった。おすすめです。