「首くくれ!」 | ◆今夜も枕投げ◆

「首くくれ!」

西島 大介
ディエンビエンフー

 所詮この世は戯言だらけ、ならば戯言こそが真実である。

 

 前作『世界の終わりの魔法使い』と同じ、異世界のボーイミーツガール。舞台はベトナム戦争、人々の狂気と正気が雫となり流れとなり濁流となって渦を巻く世界。そんな中で殺人マシーンの彼女と写真をカメラマンである彼は出会う

 この作品ではいとも簡単に人が死ぬ、農民が銃で撃たれ、兵士がナイフで首を切り飛ばされ、ナパームでカップルが吹き飛ばされる。生きる事にも死ぬ事にも執着が無いように見える彼らは、あまりにも無価値に死んでいく。いや、生きたいという気持ちがあっても、戦場ではそう主張する前に死んでいるのかもしれない。だからこそ彼らの簡単すぎる死は、一つ一つが粉雪のように僕達の心に少しずつ降り積もっていく。

 最後、戦場跡に兵士やベトコンの死体が所かまわず転っているシーンがある、彼らの死に顔はまるで良い夢を見て眠っているかのように安らかな顔をしている。自らの義務を果たしたかのようなその顔は、彼らにとって死ぬことこそがこの世界における自分の義務であったというかのようで。

 人にとって死ぬ事こそが義務である戦場は、この昼行灯のような国に生きる僕達にとってもっとも身近にある異世界じゃないだろうか。