東京の西部に位置する奥多摩。
そこには奥多摩湖と呼ばれる小河内ダムがあり、そのすぐそばにあるのが、御前山。
これは私がこの山で体験した話である。
今から数年前の秋のこと、私は紅葉に彩る奥多摩へ紅葉狩りに出かけた。
小河内ダムの駐車場にクルマを止めて、ダムを渡って対岸に行くと、御前山登山口がある。そこから登山道に入る。
お昼から登り始めて、夕暮れになった頃、山頂に到着。
遠くに、夕日に重なる富士山が見えた。
神聖な雰囲気。直感で、ここは人間の世界ではないと感じた。
山頂のベンチに座り、疲れをとっていると、青白い淡い光が、ピカ、ピカと点いて消えるのに気づいた。辺りがうす暗くなって、その光ははっきりとわかるようになった。
『蛍かな?』と一瞬思ったが、そんなはずはない。もうすぐ立冬という時期だったし、蛍が生息するのに必要な水場もない。その光は自分の周りを回っていた。
不気味だなと感じていると、ザッと音がして、若い男が目の前を通り過ぎていった。こちらに一瞥をしただけで、挨拶もしなかった。
急に怖くなった。慌てて荷物をまとめて、下山を開始した。今の男が後ろからついてくるようなプレッシャー。振り返っても、誰もついてきていない。
すっかり日が落ちてしまい、真っ暗な山道。
落ち葉の絨毯で、どこが道かわからない。淡い青白い光は、相変わらず自分の周りに浮かんでいた。
誰かがついてきている!
もう夢中で、山道を走った。
後ろからザザっと、音がする。熊かも知れない。
ガレ場を飛び降りるように下る。もう止まれない。
針葉樹林帯を過ぎると、目の前に人工光が見えた。ダムだ。人の世界に戻れたと感じた。
気がつくと青白い光は消えていた。
『あと、もう少し』と思ったとき、懐中電灯が消えた。電池切れだった。
すると、枝が折れる音、葉を踏みしめる音が聞こえてきた。言知れぬ恐怖。
その音から逃げようと駆出した瞬間、転げて滑り落ちてしまった。右足首に激痛が走った。
斜面の上の方から自分の方へ、カサ、ポキ、カサ、ポキ、と何かが近づいてきている。
痛めた足をかばいながら歩いた。何とかダムまで降りてこれた。
その瞬間、携帯電話が鳴った。出ると男の声で、「ククク逃げるなよ」と一言だけ言って切れた。
後日、この山で登山者が滑落事故で亡くなったそうだ。
そこには奥多摩湖と呼ばれる小河内ダムがあり、そのすぐそばにあるのが、御前山。
これは私がこの山で体験した話である。
今から数年前の秋のこと、私は紅葉に彩る奥多摩へ紅葉狩りに出かけた。
小河内ダムの駐車場にクルマを止めて、ダムを渡って対岸に行くと、御前山登山口がある。そこから登山道に入る。
お昼から登り始めて、夕暮れになった頃、山頂に到着。
遠くに、夕日に重なる富士山が見えた。
神聖な雰囲気。直感で、ここは人間の世界ではないと感じた。
山頂のベンチに座り、疲れをとっていると、青白い淡い光が、ピカ、ピカと点いて消えるのに気づいた。辺りがうす暗くなって、その光ははっきりとわかるようになった。
『蛍かな?』と一瞬思ったが、そんなはずはない。もうすぐ立冬という時期だったし、蛍が生息するのに必要な水場もない。その光は自分の周りを回っていた。
不気味だなと感じていると、ザッと音がして、若い男が目の前を通り過ぎていった。こちらに一瞥をしただけで、挨拶もしなかった。
急に怖くなった。慌てて荷物をまとめて、下山を開始した。今の男が後ろからついてくるようなプレッシャー。振り返っても、誰もついてきていない。
すっかり日が落ちてしまい、真っ暗な山道。
落ち葉の絨毯で、どこが道かわからない。淡い青白い光は、相変わらず自分の周りに浮かんでいた。
誰かがついてきている!
もう夢中で、山道を走った。
後ろからザザっと、音がする。熊かも知れない。
ガレ場を飛び降りるように下る。もう止まれない。
針葉樹林帯を過ぎると、目の前に人工光が見えた。ダムだ。人の世界に戻れたと感じた。
気がつくと青白い光は消えていた。
『あと、もう少し』と思ったとき、懐中電灯が消えた。電池切れだった。
すると、枝が折れる音、葉を踏みしめる音が聞こえてきた。言知れぬ恐怖。
その音から逃げようと駆出した瞬間、転げて滑り落ちてしまった。右足首に激痛が走った。
斜面の上の方から自分の方へ、カサ、ポキ、カサ、ポキ、と何かが近づいてきている。
痛めた足をかばいながら歩いた。何とかダムまで降りてこれた。
その瞬間、携帯電話が鳴った。出ると男の声で、「ククク逃げるなよ」と一言だけ言って切れた。
後日、この山で登山者が滑落事故で亡くなったそうだ。