マークスの山 文庫改訂版 | Happy-Gate

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半径5mのライフログです。

 高村薫の直木賞受賞作の文庫改訂版を読みました。

 改稿癖のある高村さんは、文庫化の際に、ちょっとした修正を試みるうちに、すっかり別の作品にしてしまうのですが、直木賞受賞作である本作も、全く別のお話になってしまってました。
 
 オリジナル版を最初に読んだのが、10年以上前だったので、細かい差異には気づかなかったけれど、その程度の読者でも分かった変更点をいくつか上げます。

 ○N大と前作では日大全共闘を彷彿とさせていた大学名を、暁成大学というお坊ちゃん大学という設定に変更。イメージとしては、慶応大学か?

 ○マークスの思考の変遷が多く語られている。
  府中刑務所のシーンとかが増えた。

 ○合田警部補が、凶器の特定をかなり早い段階でする。雑誌社に匿名のたれ込みがあり、その記事を読んでいる時に、思いつき、自分の持っていたモノを鑑定に出す。
 それだけでなく、3年前の浅野宅強盗事件と今回の事件の繫がりにもいち早く気付く。

 ○雑誌社へ行くシーンで、神保町の描写が出てくる。オリジナル版では、警視庁から覆面PCで向かった。

 ○マークスはお金を奪えない。オリジナルでは、お金を奪うことに成功するが、報復を受けてしまう。

 ○合田の義兄弟加納検事は、初めから事件の真相に気付いていて、事あるごとにヒントを送っている。オリジナル版でも、あったシーンだったが、より直接的になっている。

 ○林原のキャラ設定が変わっている。合田と吾妻の尋問後、刑事に見張られていることも気にせずに、証拠隠滅をはかろうと火をつける。精神が壊れてしまった感じ。
 
 ○マークスは、奪った銃で木原の奥さんを銃撃しない。木原宅への発砲事件を起こすが誰も怪我していない。

 ○ラストシーンの変更。山から下りた合田が、加納検事に電話するシーンが無くなっている。

 ○須崎軍団との対決シーンがない。

 読んだ感じでは、ミステリーとしては、オリジナル版と比べて読みやすくなってはいるんだけど、合田警部補が偶然に事件の核心にふれすぎている。
 反面、組織の中のドロドロ感や、上流社会のドロドロした人間模様がクローズアップされていている。
 オリジナル版では、確かに、精神に障害がある男が、こんなに緻密な脅迫事件を起こせるのかなど、疑問はあったが、着実に真相へ近づいていく刑事たちの姿が描かれていた。そして、理路整然としていないことを含めて、警察ドラマとしてリアリティがあったのに。。。