三つ子的評価 ☆☆☆

【書評】基本は背景と比較

前半は韓非子が生まれた背景
後半は中国内外との思想の比較
といった感じ
だから 韓非子の内容的な踏み込みはやや弱いかな

では何か書く
中国は紀元前409年頃より戦国時代に突入する
各国は富国強兵と国内の安定(下剋上の否定)を狙い、国内の整備に乗り出す
その時必要なのが人材であり、血縁中心の社会から能力中心の社会へシフトしつつあった
「どうすれば国を豊かに出来るのか?」この方法論こそが 俗に言う諸氏百家である
例えば孟子等は「関税を廃止し流通を迅速化する方が関税収入より国の利益になる」なんて言っていたりする
さて 韓非子
韓非子は「法家」つまり法の力で国をまとめる立場の人間である
これは礼節や古礼により「天の配剤」とやらで国を廻す儒教と極めて相性が悪い
有名なエピソードに「矛盾」があるがこれは「儒家は古代の賢人(堯と舜)が素晴らしいというが、堯が悪を懲らしめれば舜の時代に悪はなく、舜が悪を懲らしめるのは、堯が不完全で悪が絶えぬ証拠」とやみくもな古礼の礼賛を否定する

が 正直 比較の分野は弱いと感じた
例えばホッブスを絶対主義的に描くが ホッブスの考え方は
・人間は自然状態では自由であるが故「万人の万人による闘争状態」
・それを避けたければ 政府と国王を立て、人々は自由を一部諦めるべき
というモノ
ちょっと韓非子とは食い違う

また 漢の武帝に韓非子の影響を指摘するが(家族ですら裏切り、母親すら外部の愛人と結託する) これも韓非子より秦のロウアイの乱に求める方が適切とも思った

韓非子の内容への踏み込みは他書を見た方がいいとも思う

あと 出来れば「法の絶対性」についての限界も触れてほしかった
以前私は金融庁で聞いた話に「規制作れど、民間に不利益あらば民間は抜け穴を探す(故に常に利益を心掛ける)」と言われた事がある
そう 民間もアホではないので 常に法が期待道理に動くわけではない
「刑罰を厳しくすれば人は利得から、法遵守する」のも一つの真理だろう
だが「トラブルを起こしたから死刑確定、なら反乱でも起こしてやる」と考える輩が出て来るのもまた事実だ(陳勝・呉広の乱)
その辺の解説が弱いとも感じた次第

だから 私は所謂新自由主義者でもないんだが 「政府が規制すれば世の中良くなる」的な考えには賛同しかねる
物事には理由があり、理を捩曲げれば何処かに負荷がかかり いつか何かが弾けるからだ
例えば「タクシーの参入規制強化」
そもそも 何故急にタクシーが増やす事が「出来た」のかについては 国内に「運転手予備軍」たる失業者が大勢いたからだ
だから規制強化と減車をしても その分失業が増えるのでは? と危惧もする
だから 安易な規制強化も呑めないんだよね