三つ子のキャットシットワンの超高金利書評録-00620575.JPG

内容説明

全世界から巨富を集め、繁栄の限りをつくしたローマ帝国。食卓をにぎわす珍鳥・珍魚、文学に、スポーツに進出する「自由な女」、文化となった愛欲口口。「永遠」をうたわれた巨大文明の興亡の中に現代の超大国・日本の姿を透し見る。

http://www.bk1.jp/product/00620575

三つ子的評価 ☆☆☆☆+☆×0.5(☆4.5コ)

【書評】やや時代遅れの論調

さて 偉大なるローマ帝国は何故滅んだのだろうか?
いくつか説を上げてみる
・長く続いた平和と繁栄の中 ローマ市民が堅実さや勇敢さを失い 堕落した為
・ローマ帝国が拡大しすぎた為 広大な領土の維持 防衛コスト(軍事費)が増大し 社会を圧迫した
・3世紀あたりからの地球環境の寒冷化により ローマの生産力が低下、一方 同じく生産力を低下させた蛮族(特にゲルマン人)が相対的に豊かなローマ領に侵入

他には鉛中毒説や(東方への)貴金属流出による経済停滞説あたりが割と有名だと思う(当社比)

さて本書を読むと 明らかにウォーラステインの「世界システム論(従属理論)」を前提としている事がわかる
世界システムとは何か? 解りやすく言えば 富や技術を独占する先進国(中心)が途上国(周辺)にソレらを投資する
もちろんタダではなく 利息をとる
途上国は利息を支払うために 先進国に輸出をする、しかし途上国は技術的に劣る為、高付加価値製品を作れない
故に 途上国は先進国に配当を払うため 安い製品を 安い賃金で輸出しなければならない
一方 先進国は金融の利益や高付加価値製品の輸出により高い利益をあげる
結果 先進国は途上国に対して有利な立場で貿易ができるし、途上国は何時までも先進国にキャッチアップ出来ない という

さて ローマ
塩野七生あたりを読めばローマ帝国は税金が安かったとある
これは有る意味正しいが ある意味では問題がある

ローマの徴税は徴税請負人という民間業者が担っていた
彼等は属州総督から徴税権を買う訳だが、まぁ商売だからかなり過酷な取立をした
だいたいの利益率が120~200%らしい
つまり属州住人はローマの税金の2~3倍支払っていた事になる
またこの属州総督もくせ者
例えばプルータスは属州アシア総督時に住人にカネを貸している
年利は48%、当時のイタリア(ローマ本土)の金利が5%程度と言われているので 暴利といっていいだろう
また、ローマの富裕層は征服した土地に、やはり征服した奴隷達を使い 農作物の大量生産を始めた(ラティフンディウム)
勿論 大量生産した農作物は大量消費される運命なんだが、当然 大量に輸送される訳だ
ソレを支えたのがローマ街道であり 地中海交易である
交易をする以上、海賊みたいな連中は邪魔であり 連中を滅ぼすために強大なローマ海軍が存在した。

つまりローマの繁栄とは 属州の搾取と軍事力による流通の確保にある
コレはウォーラステインの覇権国家の所業そのもので、例えば大英帝国や現在のアメリカを支えるのは 製造業ではなく、世界への投資からの配当と流通による(イギリスは世界の主要な港湾や運河を制圧していた)

さて、では何故ローマは滅びたのか?
実はこの辺はあまり書かれていない
ウォーラステインは覇権が移転する、と指摘し 本書もローマの覇権がゲルマン人へ移ったと指摘はするが 「何故覇権が移動したのか」については書かれていない。
個人的にはソレが不満

一般に覇権の衰退は軍事力の低下(膨大なコストに経済が耐えられなくなる)により 世界からの搾取が困難になると言える
が やはり指摘がないのは残念


最後に本書の魅力について
数字が頻繁に出て来るのが魅力的
ローマの富裕層の凄まじき生活ぶりがかいまみえる1冊