三つ子のキャットシットワンの超高金利書評録-02427599.JPG

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ミツゴ評価 ☆☆☆☆

[書評]伝統と革新の間で

ナカテルである。
"貧乏人が増えればコンドームが変えなくなるから小子化がおさまる"なんて公言する人である。
そんな人の本である。

だけど本書はホンモノである、専門分野では確かな実力のある人でもある

19世紀 世界の4分の1を支配したイギリス、その道程はけっして1本道ではなかった。
欧州大陸の果てにある島国が"イギリス"となるのは16世紀頃の話だ。
ソレまではフランスに領土があったり、スコットランドがあったりするため ブリテン島=イギリス とは言えなかった。
そんなイギリスにピンチが訪れる
ネーデルランドが独立戦争を開始した。
経済的な要因は勿論、宗教的、地政学的な理由も絡み イギリスはネーデルランド独立戦争に介入する。
この辺をやや詳しく
ネーデルランド独立戦争は "ネーデルランドのプロテスタントVSスペイン=カトリック"という一面があった
カトリックを介した世界帝国建設を目指すスペインが イギリス国内のカトリック勢力と結び、ネーデルランドを基地にイギリスに攻めてくる なんて背景があった。
結果的にイギリスはスペインに勝利し海洋国家への道を歩き出す

海洋国家とは何か?通商国家であり金融国家である
通商が平和的でない事はアヘン戦争をみても明らかである、アヘン戦争の目的は"中国市場を力付くで開かせる"事に外ならない。
だが自由貿易はいくつかの問題をはらんでいた

まずは 例えば敵国のイギリス国内での戦時国債発行を認めるか、という問題
実はクリミア戦争でイギリスはロシアのソレを認めていた
何故なら貿易は"いかなるときも公平たるべき"が理想であり 公平さには敵も含まれたからだ

そして"もし他国との貿易で自国産業が衰退したら"という問題だ。
特に19世紀後半頃からドイツと米国の台頭でイギリス産業は不利な立場に追い込まれる
また産業革命は流通革命でもあり 安い穀物のイギリスへの流入を齎した

これらを取り締まる事は正しいのか?
エリート層にとりコレは正しい
彼等の生活基盤が農村の地代にあるからだ
だが労働者階級にとり 安い穀物を失う事は反対であった
20世紀初頭のイギリスは早くも老大国化の症状を見せ始めていた

ソレを如実に表したのが第一次世界大戦だ
食料自給率の下がったイギリスはドイツによる海上封鎖に極めて弱くなっていた
そして イギリスの御家芸とも言える海軍力
一大艦隊戦であるユトランド海戦でドイツに"勝てなかった"事実がある
冶金や光学の進んだドイツ海軍は ネルソン時代を引きずるイギリス海軍を圧倒、イギリス海軍がナンバー1の時代の終わりを表した

そして1番の問題点が イギリスが多くのエリートを失った事だ
ノーブレスオブリージュの下 イギリス貴族の子弟達は下級将校として戦場に出征し、帰ってこなかった。
コレはイギリスとり深刻な人材難をもたらした上、帝国を支えた 精神的な"何か"を失う事にもなってしまった
やがて享楽に満ちた時代をむかえ、そしてチャーチルと第二次世界大戦を迎える

バトル オブ ブリデンの下 イギリスは勇敢に戦い 勝利した。
だが、そのための戦費や物資はアメリカから借りたモノだった訳やね
借りたからには返さなければいけないし 担保や利子もいる
イギリスが持っていた植民地利権を失う理由にもなったし 戦後も貧しい生活を強いられる背景にもなった。

本書のポイントは、「何故欧州の果てのイギリスが世界の覇権を握れたか」という事にあると思う。
イギリスは何度も"もうだめぽ"という時期があった、例えばフランスの台頭や植民地アメリカの喪失等やね
では、何故イギリスが粘り強かったのか?

答えは 人材、有能な貴族階級とソレを支持した国民、彼等が情報を重視した点にあるといえる