http://www.bk1.jp/product/02952789
ミツゴ評価 ☆☆☆☆
【書評】微妙
物事には常に 多様な解釈があるように 本にも多様な捉え方がある
例えば 本の魅力は「知識の質や量」と「読み物としての面白さ」がある
前者を重視し、後者を蔑ろにすれば出来上がるのが 何処かの学者の論文みたいな文だ。
さて本書、読み物としては面白いしわかりやすい。
なかなか斬新な視点を提供してくれる。
だが 知識の質、となるとやや不安がある
http://mltr.ganriki.net/faq12e02j.html#14248にあるように 著者はたまに ぶっ飛んだ事を発言したりする、「ソースあるの?」と聞きたくなる事もある。
結論、読み物としては楽しいし 新しい視点を垣間見れるかもしれない
だが ソレを「ソースは兵頭!」と言うと 軍事クラスタには笑われる可能性が極めて高い。
私としては要クロスチェックをオススメする。
本書の性格は「軍事面からみた戦争史」といった感じ、だから「コレが正しい」というより「こういう見方がある」として見た方が宜しい、と思う。
なんか書くか。
第一次世界大戦は軍事史に多大な変化をもたらした。
その1つが航空機の発展
航空機の発展は爆撃機の発展につながった。
より遠くから より多くの爆弾を 敵の都市に落とせる様になった訳だ(コレはやがて日本は身を持って知るようになる)
結果として、大国間にあった"緩衝地帯"というモノの価値に揺らぎがでた
さて満州
明治以来、日本の最大の敵国は ロシア/ソ連 であった
日本の安全の為には朝鮮半島にロシア軍が展開する事はマズい、故に日本は大陸に進出した訳だ
仮に満州にロシアが進出したとしても朝鮮が楯になってくれる、その間に迎撃体制を整えよう、という考え方だ。
だが1930年代頃問題が発生した。
ソ連軍がTB3という大型爆撃機を極東に配備
コレは(日本の勢力圏である)南満州~朝鮮をすっぽかして直接日本本土を叩ける性能があった。
ならどーする?
仮に日ソが開戦したら、満州から早期に軍隊を動員して、準備が出来ていないソ連軍を一気に叩こう
そのためには満州に近代国家を立ち上げて、人口を増やすべきだ、日本からの移民はもちろん中国人の入植を奨めるべきだ
と考えた人間がいた
ソレが石原莞爾であり、満州事変だったりする。
だが 石原は考え違いをしていた。
満州国がソ連に対する有力な"楯"として機能するには数千万の人口と豊かな産業が必要になる
彼は 日本の経済力と軍事力で 未開拓な土地を安全に開発できれば日本人が移住し、中国人もなびくと考えていた。
が、そうはならなかった。
まず、日本人があまり満州には来なかった。
満州移民の主力は国内の食い詰めた小作人を考えていたんだが、まず 満州じゃコメが作れない、というのがある。
次いで 満州はまだまだ未開拓だったから 当然都市も(大連等を除けば)あまり発達していない
農作物を作っても 買い手がいない、となってしまう。
結果として 小作人達が元の住人から土地を略奪し、"地主"として君臨する姿が度々見られた(コレが日本敗戦後の報復に繋がる)
そして中国人、ぶっちゃければ 満州国には大勢流入したけど誰も満州国には忠誠を誓ってはいなかった。
もし 誰もが満州国に忠誠や愛着があれば 満州国滅亡後も復興運動の1つもあるハズなんだが。。。。
ぶっちゃければ石原の構想は失敗した訳やね。
もうちょい書くか
実は1941年時点でアメリカは日本が奇襲攻撃を仕掛ける可能性には気付いていた。
が、何故真珠湾が無防備だったのかと言えば、日本軍はおそらく(当時米国領であった)フィリピンを攻撃すると睨んでいたからだ
何故フィリピンかといえば、地図があればいいが 日本が「植民地解放」を旗印にして東南アジアの資源確保を考えればフィリピンの米軍が邪魔になるからだ。
つまり
・フィリピン攻撃は「東南アジア解放の為の必要な措置」と言い逃れが出来るけど ハワイを攻撃しようものなら「合衆国を侵略しました」と言い逃れが出来なくなる
→アメリカ国民は当然怒る
→戦争が収拾つかなくなる
→国力に劣る日本としては下策
→だからやらない
との計算があったらしい
下策をカマしたのが日本政府なんだけどね
最後に
この著者は確か新風の関係者なんだが 必ずしもコテコテの右翼かといえばさに非ず。
よく言われる「パール裁判」でも、別に日本を擁護していない とある
彼が憎んだのは近代の国際法だった
つまり、"イギリスに侵略されたインドを侵略した日本を裁くのは善か"という問題
日本を裁くなら同様にイギリスも裁くべきではないのか、日本という文明国家がイギリスという文明国家(の植民地)を侵略したのは問題であるが イギリスがインドが文明国家でないから侵略するのは是とするのはおかしくないか?という話
