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ミツゴ評価 ☆☆☆+☆×0.5(☆3.5コ)

<書評>実は背景には自由主義経済の是非論がアリ

ワインに関する法律をまとめた本

欧州、特にフランスを見てみる
19世紀、フランスワインは荒れに荒れた
王侯貴族支配(アンシャンレジーム)が消滅し 彼等のブドウ畑(と経済統制)が解放された為 皆好きにワインを作れるようになった

結果 誰もが量(と利益)を確保しようとし ワインの粗製濫造が目立つようになったからだ
特に19世紀以降の流通と食品生産技術の発展が拍車をかけた
例えば
・海外(仏国外)の安いブドウを輸入し フランスで醸造し『フランスワイン』として売る
・ワインに補糖をし アルコール度を高め ソレを薄めて売る
・上記のような細工の結果 品質劣化したワインに化学調味料を加えて 味をごまかす
等等
これらは主に大資本によって行われた

困るのは一般農民である
安物ワインが氾濫した結果 ブドウの価格は低迷し、さらに大資本が彼等のブドウを安く買い叩いた
結果としてフランス東部と南部では小規模農家(フランスのブドウ農家はたいてい零細農家)の生活は成り立たなくなる

そこで登場するのがAOC法(原産地統制呼称法)だ 時に1935年の事である
この法律では 一定の製法を組んでいないワインには その土地の名を冠せないようにした、例えばブルゴーニュ式のプロセスを組んでいないワインにはブルゴーニュワインとは名乗らせないようにだ

この規制が実に事細かい
ブドウの収穫時期から 栽培品種 砂糖の使用量 熟成期間 1ヘクタール辺りのワイン生産量の制限 アルコール度数や醸造樽のオーク材、もちろん混ぜ物や希釈なぞご法度だ

この法律の目的は『粗悪品氾濫を抑える事により生産者保護』にある『消費者保護』は後回しらしい

これは自由主義経済の基本たる『パン屋の慈悲』(生産者にとり、利益に叶うのは良い製品を売ることだから市場は神の見えざる手に委ねるべき、という考え)に真っ向から背くといえよう
まぁ今風にいえば『情報の非対照性』なんてなるだろうが

とにかく、フランスでは規制により品質と生産者保護を図った訳だ
個人的には ある程度の成果を収めているといっていいと思う、規制が高級感と安定性演出にソレなりに役立っているだろうからね

だが問題がないわけではない
例えば、近年はアジア諸国のワイン消費増が見込まれている
A国では辛口の赤ワインが望まれたとしよう
だが、ある生産地ではAOC法により甘口の白ワインしか事実上作れなかったりする
A国に輸出したい、その地域の生産者は赤ワインを作りたい
だが ソレがAOC法に抵触してしまうんだな

規制でがんじがらめな為、環境の変化に対応できないという事は起こり得る
特に近年は新世界ワインの台頭により、仏を中心に欧州ワインの苦戦が度々報じられている

おそらく規制緩和も容易ではないだろう
ブドウ農家が零細農家が多いと書いたが、競争力強化をするには土地と資本の集約(≒零細農家の淘汰)が不可欠になるだろう、からだ
確かEUの法律にあったと思うが ワインとブドウ農家は単なるアルコール製造業者ではなく ワインというフランス文化の担い手 という側面があるからだ
規制緩和は文化を保護しなくていいの?となる

これを保護しようとすればWTOの協定に抵触しうる、特にフランスの場合 ワインは重要な輸出品でもあるので相手側の報復措置には弱い

まぁ、ここでは『フランスワインも曲がり角に来ている』と言う事が読めればいいと思う

さて 日本のワイン
はっきりいってズタボロ
まずは 法令が濫発されている上に未整備だ
というのも 酒税絡みの国税庁 流通絡みの公取委 産業としての経産省 そして農水省・・・・と 利害を持つ各省庁が好き勝手に省令を出しているからだ

しかも体系化されていないから 脇の甘さが目立つ
普通 ワインの原料はブドウだ
だが国税庁の通達ではアルコール度数等はあるが原料については規制がない(酒税はアルコール度数により決まる)
だから リンゴ、桃、イチゴ、はてはドクダミまで好き勝手なワインが氾濫する
(注:ワインとは本来"発酵酒"という意味なので、その点は間違ってはいない、実際カナダにもリンゴのワインがある)
いや、これはまだいい
問題は原材料にこだわらない→何処の原材料を使ってもいい となる事だ
昔、ドイツワインに異物混入していた事件があった
その捜査線上に浮かんだのは 例えば安い国のブドウを国内で醸造すれば"国産ワイン"と名乗れる現実であった
さらに各業者が好き勝手に用語を濫用していたりもした
貴富ワインとか(貴腐ワインとはブドウにある種のカビをつけて作る甘口高級ワインの事)

オチになるが 最初はAOC法を見て"やり過ぎ"と思っていたけど 日本のワインの話を見るに規制が必要かな、そう思った