超高金利書評子、三つ子のキャットシットワンのブログ-02509946.JPG

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ミツゴ評価 ☆☆☆☆

<書評>PMF研究の基本、支持するしないは別に、この分野に興味があればよむべき

PMF(民間軍事企業)研究の基本の本である
基本であるが故に、よく言えば手堅く 悪く言えば刺激の少ない本ではある

なんか書くか
冷戦の終結は、先進諸国のリストラと、(大国のタガが緩んだ為に)地域紛争の激増という結果になった
そこで リストラされた軍人達が、自らの技術や経験を紛争関係者に売り込んだ、コレが民間軍事会社(PMF)の契機である
昔からカネの為に戦争に関わる「傭兵」はいた
PMFの特徴は 傭兵とは違い 会社組織という集団である事
故に(傭兵と違い) 公的な存在であり株式すら発行している
そして傭兵が「戦う」事が目的なら PMFは「戦う事もある」存在だ
戦場や危険地帯での 補給や兵器のメンテナンス、(イラクみたいな国での)難民キャンプやインフラ網の建設、軍隊の会計事務や基地の運営
さらには 新興国の軍への戦術指導や新兵教育まで多岐に渡る

これは 予算を削られた先進国軍が ソレでも一定の戦力を維持しようとすれば、後方の人員を減らさざる得ない
でも 後方支援抜きに軍隊は廻らないので外注頼みに走った形でもある

はっきり言えばメリット・デメリットがある
先ずはメリット
・小国が安全保障を「購入」出来る様になったので 大国への依存度が減った
・地域紛争でプロによる良質な軍事サービスの提供で治安が安定した(途上国では、略奪とレイプが楽しみで兵隊になる輩が少なくない)
・先進諸国は限られた資金を より効率的に軍務に廻せるようになった
・紛争地帯で働く組織(企業やNPO、報道機関)も安全を買うことが出来るようになった、それが紛争地域の利益に繋がる(伊藤忠もPMFと契約している)

だが問題もある
1番アレなのは経済学で言われる「プリンシバル・エージェント問題」だろう
つまり 長期間の契約では 契約前には顧客への忠誠が利益になるが 契約後では自己の利益を優先させようとする力が働く
例えば 公共工事では入札前には「いかに安くて良質なサービスを提供するか」について企業は熱心になる
が 一旦契約を結ぶと「いかに手を抜くか、代金を吹っ掛けるか」となりがち、という話
公共工事なら政府は「次から別の業者を選びます」というカードが切れるし、ソレが手抜きへの抑止力になる
だが、PMF業界には「別の業者」がなかなかいないんだ
例えばアメリカ軍の仕事を中国の会社へ提供するのは難しい
ならアメリカ軍の仕事は アメリカのPMFへ、となる
だがPMFは特殊な会社故に数が限られてくる、つまり競争が発生しにくい

また、命がかかってくると「愛国心」と「軍法」という足枷がないので簡単に敵前逃亡をするリスクがある、そうすれば軍は成り立たない
勿論、国が定期的に仕事をチェックするのもありだろう
だが、特殊かつ専門的な仕事である故にチェックも楽ではない
「バレにくい手抜き」も横行しやすい土壌はある

第二次大戦のバルジ作戦にて 一時的にピンチになった米軍は 補給部隊や炊事兵、秘書まで動員して急場を凌いだ
果たして 民間人にソレが期待できるか?という話もある

さらには「雇用主とのカンケイ」も気になるトコロ
・アメリカの企業が北朝鮮に雇われたら?
・雇い主がテロリストやマフィアなら?
さらに言えば資金源が麻薬や子供拉致って鉱山労働をさせるような連中なら?
・アメリカの会社がクロアチアの為に働いたとしたら(クロアチアと仲が悪い)セルビアがアメリカを恨んだら?
・手を貸した国の軍隊が戦争犯罪や侵略戦争に手を染めたら、責任の所在如何?・極端な話、PMFが小国の乗っ取りに走ったら!

これらは従来の正規軍でも起こり得るが、外注特有の責任と統制の問題は解決されていない