超高金利書評子、三つ子のキャットシットワンのブログ-03279217.JPG

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ミツゴ評価 ☆☆☆

<書評>「戦時下の経済思想」といった方が正解か

まぁ戦時下の経済学者達のアレコレ
第一次大戦は日本に2つの意味で大きな衝撃を与えた
1つは総力戦、という事実
以前は「戦争はより大きな兵力の方が勝つ」という論理であり 故に各国は軍拡に励んだ
だが 総力戦の時代は「大兵力を支えるのは生産力(経済力)」という論理が生まれた
つまり「生産力が大きい方が勝つ」となる
結果 経済が軍事政策の一要素となる

2つめは、ドイツが敗北した事実
通常 大戦争の勝敗は 軍事力の喪失(兵隊がいなきぇりゃ話にならない)、首都や主要地帯の占領、指導者や政府の崩壊である
だが ドイツ帝国軍と皇帝や政府は未だ健在であり、ドイツ本土は殆ど無傷であった
ドイツを滅ぼしたのは経済の疲弊であり、ソレが生産を滞らせて 国民生活を破綻させた結果の敗北であった(ドイツ革命、ロシア革命)
つまり、経済を維持できなければ戦争に負ける という事実を突き付ける形となった訳だ

故に日本は経済の研究を始める

はっきり言えば本書はやや読みにくい
経済の本だと読めば、頁が進むほど経済から哲学や宗教 文化論と進む
石橋湛山等の実証的な経済論や 企画院や統制経済実務に興味があったので肩透かしだった

なんか書くか
日本は欧米に習い資本主義を導入した
では資本主義が進めばどうなるだろうか
先ずは 資本の集積と寡占化が進む(つまり小数の大企業が経済を牛耳る)
結果、競争が発生しない事が考えられる(電気料金が安くならないのと同じ)
つまり競争が消滅し、経済(生産)が停滞すると見られていた。

仮に産業が1強皆弱状態になれば 一般企業の利潤率は低下する(資本力のある独占的企業に価格競争をするには利潤を減らさざる得ないから)
結果として 公定歩合のコントロールによる利潤率と投資水準の決定が効力を失うと説いている

なんかマルクス臭くない?そう 戦前はカビの生えたマルクス経済学が最新かつ 有力な理論だったんだ
だから 本書にはマルクス経済ネタがバンバン出て来る

マル経では 資本と利潤を国家を経て 国民に分配すべしとある
戦前世界では 国家に当たるのが天皇だったんだ
当時は右翼革新(" 右翼と革新"ではなく"右翼革新"だ)なる連中がおり しきりに大企業(財閥)の解体と 生産権(要は生産インフラの所有権)を天皇に返還するように迫っていた
コレは 明らかに天皇→国民 へ利潤の分配を期待しての話だが 完全に天皇機関説じゃねーか!アンタらが散々叩いていたのはなんだったんだよ と思う(天皇主権説をとれば天皇が利潤の独占をしても文句は言えない)

機関=システム という意味で"天皇は国家システムの一部です"って意味 間違っても機関銃や機関車とは関係がない

閑話休題、天皇が出て来るあたりが日本らしいが 日本独自の資本主義の話
まず 資本主義にはお金がかかる、当たり前だ、資本=お金 という意味だから
さて そのお金を何処から捻出したかといえば農村からだ
つまり高い小作料をかけて それを工業に投資した訳だ
農村では高い小作料を払わなければならない、農業の稼ぎでは足りない、故に都市へ出稼ぎに行かなければならない
こうして 日本の工業化(≒経済成長)は農村からの資金と労働力により成立したといえる
コレは実は今日の中国やベトナムがそうで"東アジアの奇跡"を支えたのと同じシステムである(二重構造モデル、或いはルイスモデルという)
だが ソレを実現できたのは当時は日本だけであった(注:個人的には普通に欧州でもあったと思うんだが、囲い込み運動とか)
故に当時の経済学者は日本の社会に 経済成長の秘密があると考える

まぁ家族システムがどうの 村社会がどうのという話