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ミツゴ評価 ☆☆☆+☆×0.5(☆3.5コ)
<書評>テイラー論争
まず「テイラー論争」とはご存知か?
1950年代までは「第二次世界大戦は何故起きたか」という問いへの解答は「ヒトラーとナチスの個人的な野望」とされてきた
これは大変都合がイイ、西側諸国には第二次世界大戦後の冷戦と欧州復興においてドイツは必要不可欠なパートナーであり、過去のしがらみは「ヒトラーやナチスが悪い、ドイツ国民もまた被害者だ」と言えば良いのだから
そこにテイラーの本書「第二次世界大戦の起源」が風穴を開ける形になる
ドイツが第二次大戦「開戦」に踏み切ったのはヒトラーやナチの「暴走」のみの責任に非ず、第一次大戦にて喪失した栄光の回復であり、それはドイツ国民に支持された「政策」である、と
本書はセンセーショナリズムを巻き起こす
まず本書を支持したのはネオナチである、ヒトラーやナチは悪くは無かったと
次にその反発がおきる、テイラーは資料の選択が恣意的だ、外交面ばかりに焦点を当てている、と
後者については私も思う点がある
当時のドイツ経済は軍需を中心とした公共事業の内需拡大の結果 輸出減と輸入増を迎えていた
工業国で人口大国であるドイツを動かすには資源が不足していた
資源を獲得するために東方への野心自身は確実にあったと思う
閑話休題、とにかく本書はかなり話題をよんだ、テイラーも歴史修正主義なるレッテルを貼られる事になる
だが変な話だ、ドイツの犯罪の大半は人道に対する罪、例えばユダヤ人やスラブ諸民族への迫害や虐殺だ
だが本書は触れていない、当たり前だ本書のテーマがタイトル通り第二次大戦の開戦プロセスにあたるからだ
仮に本書がドイツの弁護としてもユダヤ人やスラブへの迫害自体は一切弁護していないんだな
なんか書くか
物語はヴェルサイユ条約に遡る
この条約(他の様々な条約もあるが)の結果、ドイツ、オーストリア、ロシアといった大国がひしめいていた東欧にぽっかり力の空白地帯が生まれた
つまりこれら大国の領土を削減、民族自決の名の許に東欧に小国家群が成立した
ポーランドやチェコスロバキア ハンガリー バルト3国 ユーゴスラビア等だ
東欧、コレが本書のカギとなると私は思う
第一次大戦後のヨーロッパの4大国(ソ連、ドイツ、フランス、イギリス)の東欧への立ち位置をまとめると
・ソ連
→スラブ民族のリーダーとして、また西側との防護壁(防疫線)として東欧を勢力圏に治めたい
・ドイツ
→過去の勢力圏(ナワバリ)であり、多くのドイツ系住人が住む土地なので 何等かの形で勢力下に治めたい
・フランス
→別に勢力下に治めたくはない
しかし、単純な国力が独ソに劣る以上、東欧諸国が親仏であれば フランス+東欧 同盟で独ソに軍事的な対抗が可能になるので好都合
・イギリス
→ぶっちゃけ、あまり欧州大陸には関わりたくはない
だが東欧のパワーバランスが乱れれば、欧州大陸の不安定化という形でイギリスの安全保障に響く
結論としては現状維持が望ましい
さてこの中で特にドイツの要求が強かった
当時は東欧に多くのドイツ人が住んでおり、チェコのズデーテン地方やポーランドのダンツィヒ等ではドイツ人が歴史的にも多数派を占めていた
同じ民族が1つの国で団結したい、という欲求が生まれる
当然 ドイツは東方へ進出を諮る、イギリスやフランスは阻止をしたい となる
だが問題が出た
当時 イタリアがエチオピアを侵略した
英仏は反対する立場なんだが、結局は何もしなかった アフリカの小国のために戦争をするのはバカらしかった訳だ
これがドイツに確信を与えた、アフリカの小国を見捨てる連中なら東欧の小国も見捨てるハズだ、と
結論から言えば見捨てた訳だ
当時は第一次大戦で多くの犠牲を出した
若者が大量に戦死した結果 急速な高齢化が進んだ、次に戦争があれば ガチで民族が滅びるかも、とすら言われていた
英仏の腰抜けぶりにドイツは次々と要求を繰り出す
これが ラインラント進駐 オーストリア併合 ズデーテン割譲 チェコ併合 そしてポーラント侵略 第二次世界大戦と相成る訳だ
つまり テイラーは第二次世界大戦の原因をヴェルサイユ条約でドイツ人エリアを分断した事と それに不満を持つドイツに対する英仏の外交的なミステイク(今日では宥和政策とよばれる)によるモノとしている訳だ
