超高金利書評子、三つ子のキャットシットワンのブログ-02990031.JPG

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ミツゴ評価 ☆☆☆☆

<書評>力の本質

地政学に関する小論文集である
テーマの性格上、かなり形而上学的であり なかなかとっつきにくい
でも 何か書いてみる

さてシー・パワー(Sea power)とはなにか?
まぁ"海に関する力"つまり海洋力だとはわかる
では"力"とはなにか

力とは影響力である
さらに言えば「相手を自らの望む方向へ動かす」力ともいえる
例えば経済力
富の本質は 相手に何かしてもらう事である
無人島ではドル紙幣も金塊も意味を為さないでしょ?
ソレらが意味を成すのは買い物をしたり 人間をコントロール出来るからだ、それ自体には意味はない(金塊なら"綺麗だな"ぐらいは思うかも知れない)

海洋力も海洋を通じて相手に影響を与える力だと言える
例えば 中国は現在潜水艦戦力にかなり力を入れている
コレは中国の周辺国へ「中国と敵対すれば、お前らの輸送船片っ端から沈めてやる、そしたら経済がガタガタになるだろ?嫌ならオレに従え」という影響力である
ソレに対する海上自衛隊の答えが「対潜水戦(ASW)に力を入れる、バカな真似をしても片っ端から駆り立ててやるから、下手な恫喝はやめれ」という影響力である

力とは相手への影響力である、と書いた
つまり 与えたい影響によって力の中味が変わってくるし、相手との関係により影響力は自然と変わってくる
つまり 国や時代によって影響力である力の中味は変わってくる訳だ

では見てみる
日本は近代以前はシーパワーに対して強い関心を見せていなかった
白村江の敗戦以来(朝鮮出兵等があっても)大陸への軍事的・経済的な進出の度合いが低かったし、元寇等の侵略も 国内での迎撃戦であった、海上で元艦隊を撃破するのでも 艦隊を結成し大陸へ進攻する訳でもなく
近代以降はその"海上での迎撃"という方面へ向かう
近代とは欧米諸国による地球の分割の時代であり 当然彼等は海からくる
ソレへの備えであり
やがて日本が「植民地を持つ側」に廻るようになっても 対立する米国との国力差がある以上は、攻めてくる米艦隊を迎撃する、という方向へ戦力は進む
意外と知られていないが日本の軍艦は乗り心地が悪い、コレは迎撃用の為だから長期航海の必要性が相対的に低かったためでもある(イギリスは逆、乗り心地が悪いと遠く離れた植民地で活動する前に兵員がへばってしまう)
やがて敗戦
戦後の日本海軍(海上自衛隊)の当初の任務は 戦時中日米海軍がバラまいた機雷の回収である
次はシーレーン防衛だ
しばらくするとソビエトが力をつけてきた為 アメリカが助けにくるまで3海峡(対馬、津軽、宗谷)を封鎖し ソ連太平洋艦隊の封じ込めが加わる
そして現在・・・・
なるほどソビエトは滅び 中国海軍もまだ成長中だ
だが現在は北朝鮮のミサイルを防衛したり 海賊やテロリストの退治に任務は多様化拡大化するばかり
さらに今回の震災で証明されたような、災害対策も重要になるだろう
グローバル化が進み 貿易が増えれば、シーレーンの価値があがる
逆に言えば(敵から見れば)シーレーンを潰す価値もあがるんだ
だから今はアジアでは潜水艦ブームが起きている 早い話が軍拡レースだ

だからシーレーン防衛の重要性は増すばかり・・・・・

アメリカではまた別の話がある
アメリカの敵はソ連艦隊、ではなくテロリストだ
でもテロリストは(海賊をのぞき)海にはいない
故に米海軍には"海からの攻撃"が求められる
トマホーク攻撃と空母艦載機の爆撃、海兵隊の遠征がそうだ

ここで述べるべきは、力は相対的な概念であり、力の性質は環境により様変わりするという事だ
逆に環境が変わる事を予測できれば力の形も予測でき、国際政治の理解に繋がると言えそうだ