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ミツゴ評価 ☆☆☆☆
<書評>望まれなかった国
この世のすべてがそうである様に すべての国は「誰か」から望まれるからこそ存在し得る
北朝鮮ですら一部特権階級と西側との緩衝地帯+経済的植民地を望む中国が支持しているから存在できる訳だ
では満州国は誰が望んでいたのだろうか?
実は満州国には国民がいない、そこにいるのは 日本人や中国人だ
国の存続を望むハズの国民がいない、故に満州国は呆気なく崩壊した訳だ
仮に多くの人々が満州国独立を欲するなら 少なくともチベットやウィグル(東トルキスタン)のような抵抗運動が起きているはずだ
では満州国は誰から望まれて、生を得たのだろうか?
当時 その男は夢想した
やがて東洋文明と西洋文明との最終戦争が起きるだろう、と
東洋文明の代表者たる日本は 西洋文明国(アメリカやソ連)に比べて国力、特に第一次大戦後に重要さを増した軍需生産力を支える天然資源が圧倒的に不足している、西洋文明に対抗するには東洋文明国の力と資源を日本の下に集中させるべきだ、と
男の名前は石原莞爾という
ここで疑問が沸く
「東洋文明」なんていっても 例えば日本と中国は全く別の国だ、中国人が大人しく日本の傘下に入るだろうか?
石原は言った、中国人はメシと安全さえ提供できれば 誰の下にでもつく民族だ、と
事実 元(モンゴル人)や清(満州人)の下にも付いたではないか、ならば日本の軍事力で治安の乱れきった中国を治めてやるといえば大人しく従うはずだ、と
満州国は、天皇制(羊) 関東軍(獅子) 中国(龍)という異なる性質を持った化け物(キメラ)として誕生した訳だ
キメラは各生物が調和しなければ生きてはいけない
石原は 東洋文明の理想が調和(五族協和)を果たすと考えた
だが実際は違った
満州は「日本の経済と戦争」のための資源供給地とされ、事実上は日本の植民地であった
例えば 日本人の賃金は中国人の3倍の水準であり、生活水準も雲泥の差があったし 満州系(中国系)の役人は日本人の役人に常に警戒されていた
関東憲兵隊の定めた「対満戦時特別対策」には 五族協和どころか 各民族の離間と相互利用、とはっきりとある
これは欧州諸国の植民地政策の分断統治(ディビジョン&ルール)そのものである
そう 日本にとって満州国は結局は植民地でしかなく、住民もまた植民地住人でしかなかった訳だ
キメラは羊であり獅子であり龍である
そして羊でも獅子でも龍でもなく、かといってキメラ自身でもない
「自我のない国」これが満州国ではないのだろうか?
自我がない国が何故 独立を求めるだろうか?
そう思った
