やっぱり書評です
あと批判的なコメントも歓迎しますが、出来れば内容に遵守してください
魚の味を語っているのに肉の話をされても困ります。

さて、行くでガンス
「世界自動車メーカーどこが生き残るのか」土屋勉男 大鹿隆 井上隆一郎
この本は世界の自動車メーカーの現状、環境、戦略の分析の本です。
はい、面白いです。
気になるポイントを2つ程書きたいと思います。

今後の自動車メーカーの動向です。
製造業には大きく別けて、「モジュール型」と「インテグラル型」があります。
「モジュール型」とはパソコンや家電みたいに、部品を集めて、組み立てるスタイルです
この場合のポイントは「いかに部品を効率的に集めるか」「いかに安く組み立てるか」になります
だから技術力よりも生産規模や労働力が重要ですから 韓国や中国に強味があります。

「インテグラル型」これは自動車メーカー、そして日本のお家芸です。
例えばパソコンなら、演算処理を司るのはCPUであり、モニターやハードディスクは(故障は論外ですが)あまり関係ありません。
しかし、自動車は燃費を司るのはエンジンですが、車体の軽量化やサスペンションの改善も大きな要因になります。
つまり「燃費を改善したい」と思えば、エンジンだけでなくあらゆる部品を調整しなければなりません。(パソコンなら演算処理を高めたいならスペックの高いCPUを使えばいい)
日本企業の御家芸とは、この「調整」にあります。
さて本題ですが、今後電気自動車の時代が来た場合、電気自動車は「モジュール型」か「インテグラル型」か という問題です。
「モジュール型」という事は「御家芸」による技術的優位性が低下しますから日本の自動車メーカーは経営的な困難を突き付けられる事になります。
勿論対処方法はあります、部品メーカーとして世界最高のバッテリーやモーターを販売する事です。

もう1つは次世代自動車に対する展望です。
「エコ」の方向に進むのはわかっています、しかしその方法が「電気」「水素」「ハイブリット」「ガソリンエンジンの改良」「フレックス(バイオエタノール)」「ディーゼル」 どれになるのか?の展望がありません。
そしてこれらは高い技術と莫大な投資を要求するため、1社で全てに対応する事は困難です。
よって自動車メーカー同士、また異業種との合従連衡が盛んになります。
例えばスズキとフォルクスワーゲン(VW)の資本提携の背景にはスズキがVWのもつ莫大な研究予算とハイブリット等の技術を欲した事が背景にあります。
また異業種との交流については、09年にホンダがジーエスユアサとハイブリット専用電池の会社(ブルーエナジー)を立ち上げたり 07年には日産はNECトーキンや日本電気とともに電池会社AESCを立ち上げたりしています。

世界の製造業が自動車を中心に激変する可能性があります、日本という国がその渦中にある事を自覚した方がいい そう感じてます。

「経営危機のルーツ」野口悠紀雄
まぁ面白いですよ
内容は東洋経済の連載の単行本化なのですが、正直複雑ですね。
というのも私見ですが 過去の分析や現在の経済分析は非常に優れているんですが、どうも将来のビジョンが「結論ありき」な面が否めません。
例えば「これからは金融立国の時代、何故なら製造業は中国が台頭してくるから」「お金の流れる事が変わらない以上金融は発展する」等
難しいですね 氏は「金融は製造業と違い中国とぶつからない」とありますが、中国とぶつかる事が脅威なら中国とぶつからないモノを作ればいい話です。
例えば中国は世界最大の鉄鋼生産国ですが高張力鉄鋼(ハイテン)等 高付加価値製品は日本企業が強いです。
勿論中国企業が力をつける可能性はおおいにあります しかしそれは金融も同じではないでしょうか?
また「資金の流れが~」の下りも問題ありです。
氏はイギリスのオイルマネー運用について書いていますが、石油価格が下がれば流れるお金も当然減ります。
また、「現在の金融危機は金融工学軽視による」これは事実です、金融工学の本質はリスクヘッジです。
しかしコレは氏が賞賛する07年までのアングロサクソン諸国の経済成長もまたまやかしであった事の証明になります。
自分は当時から氏の雑誌連載を読んでいましたが、米英の金融立国戦略が金融工学無視という主張は見た記憶がありません。
流れをみれば 1)規制緩和や金融工学で金融による経済成長→2)その後ユーフォリアに陥り、金融工学軽視に→3)バブル発展 となりますが、07年までの金融賞賛を見る時は1)を 現在の金融擁護を見る時は1)と3)しか見ていない気がします
つまり、07年までの発展を「金融工学のおかげ」と見て「ユーフォリアのおかげ」とは見ていなく 現在の破滅を「ユーフォリアのせい」にしています。

07年までの成長は例えば資産を収益率還元法を使えば「怪しいかも」とわかります(後智恵ですが)
その辺の指摘がないのが残念です

しかし、複雑になりがちな金融商品やシステムの問題指摘は大変優れていますので その辺はオススメできます