友人は言った。
「みんな共通の“ある物”を持ってきている」
そこで偵察に来たわけである。
洗い場のカランは赤と青のボタン式というか、よくある押すタイプのやつ。シャワーは固定式で水圧弱め。シャンプーのすすぎに時間がかかる。長めのシャンプーを終え、髪をまとめて濡れタオルを頭に乗せて一息つく。隣を見ると、洗面器ではなく赤いポリバケツを使用している。ワイルドだ。
お湯に浸かり視線を巡らせる。赤いポリバケツを使用しているひとがもう1人いる。共通の“ある物”は赤いポリバケツのことなのだろうか。
お湯はかなり熱め。水風呂と併用し、合間合間に洗顔、歯磨きなどを入れてインターバル。男湯は賑やか。井戸端会議以外に手鼻をかむ音や“カー、ペッ”(痰からみすぎやろ)と擬音擬態のオンパレードだ。
自転車や単車、車の割にひとが少ないような氣がした。サウナ組が相当数いるに違いない。根気よく観察を続ける。
サウナから出てきたある女性が縄張りと思われる洗い場へ腰を下ろす。一辺20cmほどの立方体型のタッパーに麦茶らしきものを凍らせてきたようで、蓋をあけるとマイカップに麦茶とおぼしきものの溶けた部分を注ぎ、ぐいと飲み干す。腰に巻いた黄色いバスタオルはサウナの入口に掛け、いざ水風呂へ。
麦茶らしきものをタッパーで凍らせてくるのもブームなのだろうか。もうお一方いた。あるいは共通の“ある物”とはタッパー麦茶なのか。
サウナ組が出てきたとき手にしていたものといえば、砂時計だ。おそらくこれが共通の“ある物”だと推測する。十中八九間違いないと思うのだが、これいかに。
さすがにのぼせてきた。今回の偵察はこれぐらいにしておこう。あるいは、次回はあるのか。