復讐⑤「彼方立てれば此方が立たぬ」 | 融通無碍(ゆうずうむげ)

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死ぬまで学び続けたい。
モットーは「良い悪いではなく好きか嫌いかで選ぶ」
そんな人生ありのままを綴ります。

結納が終わり、いよいよ結婚式の段取りを進めなければならなくなってきた。

 

彼の母親は正座して両手で熱いお茶を啜り、彼の顔を正面から見据える。

「おまんらの結婚式やさかい、おまんらが好きなように決め~」

それが本心ではないことは、彼の弟の結婚式までの流れを見る限り嫌というほどわかる。

食事、引出物、招待する人の数まで、大概は彼女の思うとおりにしたいのだろうと思われる。

 

「そろそろ招待状出さんなんな。あの子らより人数少ななったら具合悪いさけよ」

彼の母親に指摘され、アタシは途方に暮れた。彼の親戚は、アソコを呼べばココも呼ばなければならない、とやらで、人数が段々増えていく。ウチは親戚といっても、母、姉夫婦と甥っ子、妹と甥っ子、弟の大人5人子ども2人だけだ。そう伝えても彼の母親は聞き入れてくれない。

「人数合わさんなんさけな~。友達呼ばなしゃあないわな」

アタシはぐうの音も出ない。

 

自宅へ戻り、母に相談しようと洗い物をする背中に声をかける。母はコチラを見向きもしない。蛇口を緩めることもせず吐き捨てる。

「カネも出せへんのに口出しできるかいな。恵んでもらってる身分やのに」

アタシの母は卑屈な態度を貫くつもりのようだ。

(貧乏なくせに、どんだけプライド高いんよ。このオカン、なだめすかすのにかなり労力使うわ)

 

にっちもさっちもいかないときは寝るに限る。アタシは早々に布団にもぐり込み、まるくなる。一緒になりたいと思っただけなのに……。結婚って、いや結婚式って一体誰のためにするのだろう。ため息しか出ない。

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