結納が終わり、いよいよ結婚式の段取りを進めなければならなくなってきた。
彼の母親は正座して両手で熱いお茶を啜り、彼の顔を正面から見据える。
「おまんらの結婚式やさかい、おまんらが好きなように決め~」
それが本心ではないことは、彼の弟の結婚式までの流れを見る限り嫌というほどわかる。
食事、引出物、招待する人の数まで、大概は彼女の思うとおりにしたいのだろうと思われる。
「そろそろ招待状出さんなんな。あの子らより人数少ななったら具合悪いさけよ」
彼の母親に指摘され、アタシは途方に暮れた。彼の親戚は、アソコを呼べばココも呼ばなければならない、とやらで、人数が段々増えていく。ウチは親戚といっても、母、姉夫婦と甥っ子、妹と甥っ子、弟の大人5人子ども2人だけだ。そう伝えても彼の母親は聞き入れてくれない。
「人数合わさんなんさけな~。友達呼ばなしゃあないわな」
アタシはぐうの音も出ない。
自宅へ戻り、母に相談しようと洗い物をする背中に声をかける。母はコチラを見向きもしない。蛇口を緩めることもせず吐き捨てる。
「カネも出せへんのに口出しできるかいな。恵んでもらってる身分やのに」
アタシの母は卑屈な態度を貫くつもりのようだ。
(貧乏なくせに、どんだけプライド高いんよ。このオカン、なだめすかすのにかなり労力使うわ)
にっちもさっちもいかないときは寝るに限る。アタシは早々に布団にもぐり込み、まるくなる。一緒になりたいと思っただけなのに……。結婚って、いや結婚式って一体誰のためにするのだろう。ため息しか出ない。