「窓の魚」 を読みました。

西さんの本を読むきっかけになったのはテレビで作家が作家を紹介するとうような内容の番組をたまたま見ていた日です。一年半程前になるでしょうか。
そこに西さんが出演していらっしゃって、太宰治を紹介されてました。
周りから長年太宰を勧められ、「あんたは絶対に好きだから」と言われていたのが逆に気に食わず。しかも「人間失格」なんてタイトルからして既にそそられ続けていたし、その名前からもう間違いないと思って、読むのが怖かった。
そんな事で10年は自分で遠ざけていた太宰を、人間失格を、ついに読んだ事がまずはじまりでした。
頑固に拒否してたわりになんともすんなりとそうなりました。そうなってから数日で太宰の作品を漁るように読みました。

そこから一週間位の間に、その番組を見ました。本当に偶然でした。元々本を読まなかったので西さんの名前をその時初めて知りました。最初はびっくりしました。作家さんには色々な方がいらっしゃるとは思いますが、何しろ自分は本当に本を読むことがほとんど無かったので、その人はあたしが持っていた作家のイメージとはまったくかけ離れた印象の人でした。まあ本当に勝手なイメージでしかないんですけど。
とてもとても可愛らしい方で、とっても優しい関西弁で、時々ニヤニヤした口調でほとんど楽しそうに太宰治の小説を朗読していました。女の人がそれを声に出して読んでいたというのも、何だか不思議でしたけど、それだけではなくて、あの優しい楽しそうな語り口が、あたしにとってまったく新しい太宰の見方そのものでした。本当に楽しそうだったのです。

西さんは、世間では太宰は暗いもんだと思われているけれど、実はとってもユーモアのある人で笑わせるような事を書いてる、というような話をされてました。
何となく、読んでいて自分もそんな風に感じる事があった気がしましたが、その他のくらーくて、うしろめたくなったり、それに共感するようなものの方にばかり気持ちがいっていました。
だから、もう一度太宰を読んで見ようという気になりましたし、何より西さんに惹かれていました。この人の書いたお話を読みたい!というのはもちろんでしたし、西さんという人がどんな人なのかが気になって気になって仕方がなかったのです。
そしてすぐに本を買いました。地元の駅の中の小さな本屋さんだったので、限られた何冊かから「さくら」を選びました。帯にベストセラーだと書いてあって、西さんの名前を知らなかった自分が恥ずかしくなりました。でも、ベストセラーなんてどうだって良かった。あの表紙のピンク色に惹かました。裏に書いてあるあらすじもほとんど読まずに買いました。
あのとき選んだのが、西さんの本に出会ったのがさくらで本当に良かったと今でもすごく思います。
本を読んであんなにいろんな涙を流したのは初めてです。
あたしは自分の家族の事をとっても愛しくなりました。あのお話に出会って、本の素晴らしさを知りました。読み終えた頃には、西さんに惚れていました。あの日テレビで見たあの可愛らしい女の人がもう愛しくて仕方がありませんでした。おかしいかもしれないけど、男の子を好きになる時とほとんどおんなじ感覚です。

それからは、もう太宰の時以上に西さんの作品を買い漁り、読み漁り。

さくら
きいろいぞう
通天閣
あおい
うつくしいひと
きりこについて
しずく
こうふくあかの
こうふくみどりの

読みました。読んで彼氏にまるで友達の話をするようにそれを話しました。
西さんは本当にすごい。
文章を読んでいてその景色や人や色がもう自分の頭に描けて、それは本当に鮮明ですごくうっとりしてしまう。何よりも「やられた!」と思う。自分が言葉にならない、他人相手には表現する事がなかった感情をこの人は知っている。
あたしはすごく安心した気持ちになる。こういう人は自分じゃなくたっているんだって思う。恥ずかしくて口には出せないような純粋な気持ち、認めたくないどろっとした嫉妬、ふかーいところからやってくる他人に対する気持ち。あたしは言葉を知らないのでちっとも上手な感想を言えなくてうずうずと悔しい。絞り出したいのにいくらやってもダメ。でも今のこういう感情こそ、西さんは言葉にしてくれる。元々ここにあったもんが戻ってきたみたいに、すんなりと入ってきます。
とっても幻想的なお話なのに突き刺さる。現実の上にある幻想だからだと思う。
西さんの本は、一冊が何だか1人の生きている人みたいだといつも思う。
あたしは読んだあと、いつもあたしの大好きな誰かに抱きしめてもらいたくなる。抱きしめたいと思う時もある。何かが愛しくてたまらないから、それが消えないように握りつぶされたい、そんな気持ちになる。

西さんの本を読んでから、自分は前よりずっと自分の感情を素直に見れるようになったし、知れる事も増えた。自分はこう感じているって今までわからなかったり、見ないようにしてた事。それは大きな変化でした。今までより小さな事を幸せに思ったり、それで無茶苦茶に泣く事もある。それから、自分の大事な人たちの人生を考えたりする。この人のために何かしようとかじゃなくて、見てたくなる。

やっぱり上手く言えないのはとても悔しいですね。
だいぶ気持ちの悪い程語ってしまいましたが。

早く新刊を買おうと思いますです。