1 設問1(1)について
 Dは本件パイプに動産譲渡担保権を設定して、占有改定で対抗要件も備えている。特約でパイプの使用は認められている。
(1) かかる場合、Cに対して譲渡担保権を主張できるか。
 本件パイプは、請負工事により建物と一体化している。不動産に動産が従として付合し、分離復旧する事が社会経済上著しく不利益な状態になっているので、「附合」(242条1項)しているといえ、完全にCの所有物となるのでこれは不可。
(2) では、物上代位できるか。
 明文ないものの、譲渡担保権も担保権として当然に物上代位性を有しているものと解する(304条類推)。
 そして、付合は、その物が全く利用できなくなる点において「滅失」と同視できるので、物上代位を行使することは可能であると解する。
(3) 償金請求はできるか(248条)
 譲渡担保権は、形式上所有権移転の形をとるから、所有権はDに移転。
 所有者として、損失を被ったといえ償金請求可能。

2 設問1(2)について
 前述のようにDはCに対して物上代位を行使できる。この場合、請負代金に代位できる。
 しかし、BはこれをEに譲渡している。
(1 かかる場合、DEの優劣はどうなるか。「払い渡し又は引渡し」(304条1項但類推)に債権譲渡が含まれるかが問題となる。
ア そもそも、同条が差押さえを要するとした趣旨は、物上代位の目的の特定性を維持しつつ、第三債務者の二重弁済の危険を回避するとともに、譲渡担保は抵当権とは異なり占有改定という観念的な公示方法しかないことに鑑み取引の安全を図ることをも趣旨としていると解される。
 しかるに、債権譲渡がなされた後にこれにつき物上代位する事ができるとするのでは、取引の安全を害することになるので上記趣旨に反することとなる。
 したがって、「払い渡し又は引渡し」に債権譲渡は含まれる。
イ 債権が譲渡され、通知がなされている以上DはEに優先しない。

3 設問2について
(1) BF間について
 まず、Bが本件鋼材を即時取得しているか(192条)が問題となるものの、Bには盗難の事実を疑うべき事情があったため、過失があるといえるので即時取得は成立しない。
 Bにこのような過失がある事情の下請負工事で本件パイプを建物に付合させ、Fの所有権を害しているのでFは不法行為の損賠が可能(709条)。
 なお、Bは本件鋼鉄をパイプに加工しているが、溶かしただけで未だその同一性は失われていないためこの時点ではなく、附合させた時点に不法行為が成立する。
(2) CF間について
 Cがパイプを即時取得しているか問題となる。
 請負も取引行為である以上「取引行為によって」(192条)といえ、過失もないので即時取得しているものと解する。
 もっとも、Fは鋼鉄を盗まれたのであるから193条が適用される。
 193条の趣旨は、2年が経過した後に初めて即時取得者に所有権が帰属するものであると解されるから即時取得されてもまだ所有権はF。
 そして付合されちゃったのだから、Fは所有権者として償金請求できる(248条)。






あぼーん。イミフ。