この間会った中小企業の社長が、こんなことを言っていた。

「私は顧客に対して媚びる必要はないと思っている。どんな店でも、顧客からお金をもらうときにはありがとうございますと言う。それは当然のことだが、だからといって客のほうが偉いわけではない。店側も努力して商品を生み出し、客の役に立っているのだから、客も店に感謝をすべきなのだ。
もちろんそのためには、店側がそれだけ質の高い商売をしている、という事実が前提としてなければならない」

その通りだと僕は思った。ビジネスというのは基本的に金銭と労力の等価交換で、両社の立場は本来対等であるべきだ。

しかし、おそらく特に日本では、客の立場が強い。「お客様は神様です」といった気持ち悪いフレーズが、今でも割と当たり前のように使われたりする。客の無茶な要求のために、深夜まで残業して仕事をこなさなければならなかったりする。

日本のサービスはすばらしい、とよく言われる。特に接客のレベルは世界一だろう。だから大抵の日本人は海外に行くと、サービスに対して物足りなく感じる。「もっと気遣ってほしい」「もっと良い設備を導入してほしい」と思う。しかしそれは客の甘えなのではないか。金を払っている人間は優遇されるべきだ、という思い上がりがそこにあるのではないか。

日本はおもてなしの国である、という。それは良い。しかし、もてなされるのに慣れ過ぎるのも考え物だ、と思う。