学校教育における体罰が、問題になっている。論ずるまでもなく教員が生徒に暴力を振るうのは倫理的に悪であるし、犯罪でもあるのは明らかなのだが、不思議と昔から、体罰を擁護する人というのは一定数存在する。中高年の人だけではない。20~30代の人の中にも、そういう人は多い。僕の友人の中にもいる。
こういう人たちが口をそろえて主張するのが、「自分たちも体罰を受け、厳しい環境で育ってきたのだから、今の子供がそれを受けるのは当たり前だ」という理屈である。これは恐るべき想像力の欠如した意見だ、と僕は思うのだけれど、それぐらい、人は自分の経験をもとにしか物を考えられないものなのだろう。
ちなみに僕も中学生の頃に体罰を受けたことがある。ノートで頭を軽く叩く、といったライトなものではない。宿題を忘れた者は全員ビンタするという粗暴な教師がいたのだ。あれが愛の鞭だったとか、耐えるべき試練だったのだとか、思ったことは一度もない。ただ、学校というものは、そしておそらく社会というものは非常に不条理な所なのだな、と子供心に思っただけだ。
子供の頃に家庭内暴力を受けて育った子供は、大人になって親になったとき、自分の子供にも暴力を振るう可能性が高いという。その点だけを見ても、体罰が教育的に効果を持たないことは明らかである。
……と、ここまで書いてきて、僕の場合、暴力教師と出会ったことによって得たものが一つだけあったことに気がついた。それは、「大人の判断や、多数派の理屈が正しいとは限らない」という事実を早い段階で学べたことだ。「子供の頃先生に大した理由もなく殴られたけど、今となっては感謝している」なんて真顔で言うのって、僕に言わせればどうかしていると思うんだけどなあ。