20代の人と一緒に仕事をする機会があったのだが、そのとき、標題の質問をされたのだった。20代を終えたビジネスマンとしての意見が訊きたいのだ、と。
「ちなみに、あなたは何だと思いますか?」と訊き返すと、その人は
「20代のうちに読んだ本の量が、30代を決めると聞いて、それをがんばってます」と答えた。
僕は、それもいいけど、もっと大切なことがあると思う、と言った。
すなわち、考えること。苦労すること。寝る時間を削って仕事をすること。嫌な奴にいっぱい会うこと。「やってられるか」と憤り、我慢すること。できれば一度は金に困ること。
もし、相手が女に縁のなさそうなおとなしい男だったら、「少なくとも2、3度は恋愛もしておいたほうがいい。面倒な女とも一度は付き合った方がいい」と諭すところだったが、その必要はなさそうだったので、黙っておいた。
もちろん、もし一生苦労せずに済むんなら、それが一番いいと思うのだ。でも、たいていの人はいつか苦労をする。苦労に耐えるなら、体力のある若いうちがいい。40代、50代になってから初めて苦労をする人は、かわいそうだと本当に思う。でも、自業自得なのだ。
僕は今年で33になるが、今にして思えば、もっと20代のうちに苦労してもよかった。第一、僕はとても運が良くて、周りに現れる人のことごとくが優しく親切な人たちだったのだ。本気で憎んだ人は、今のところたった一人しかいない。
でも、たとえ一人であれ、憎むべき人に会えたことは、やはり僕にとって幸運だったと思う。決してわかり合えない人間も、世の中には存在し得る。それを体感しない限り、すべての優しさは偽善に過ぎないと思う。