- アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)/伊坂 幸太郎
- ¥680
- Amazon.co.jp
大学入学のためにアパートに引っ越してきた「僕」。隣の部屋に住んでいる悪魔のような風貌をした不思議な青年から持ちかけられた計画は、「一冊の広辞苑を盗むため、書店を襲わないかというもの。その奇妙な計画の裏には、2年前に起きたある事件があった……
ミステリー的な要素と、人間ドラマをからめた作風はこの作者の得意とするところで、その複雑な味わいは本書でも堪能できる。最初は語り手が饒舌すぎてちょっと鼻につくところもあったのだけれど(すいません)、後半に行くにつれてどんどん面白くなった。
湿っぽいセンチメンタリズムは好き嫌いが分かれるところだろうが、僕はギリギリでOKだと思った。軽妙な文体のおかげもあるだろうが、推理小説としてもよくできていることが最も大きな救いになっている。特にこの作品では、「現在」と「二年前」という二つの舞台を交互に見せるという叙述方法を利用した大がかりなトリックが一つあるのだけれど、その種明かしを知ったときは本当にびっくりした。うまいなあ。そして最後には、ちょっとした泣かせどころもある。これもよくできている。
逆に言えば、人間ドラマとミステリーのどちらともつかない中途半端さはやはり残る。それをどう判断するかは読者の好みの問題だろう。