肉じゃがを作ってしまった。
しまった、などというほどのことではないのだけれど、何となく、引き返せない場所に来てしまったような気がするのはなぜだろう。
そうだ、僕はまだ、女の子に肉じゃがを作ってもらったことがないのである。結婚式の二次会の余興なんかで、よくあるではないか。「最初に奥さんに作ってもらった料理はなんですか?」と司会者が新郎に聞いて、答えは「肉じゃがです」。既製品のように牧歌的な世界。
そもそも僕は、あまり女の子に料理を作ってもらってこなかった。僕が作って食べさせていることのほうが、ずっと多い。肉じゃがなんか自分で作るようになってしまったら、ますます女子は僕のために料理してやろうと思ってくれなくなるのではないだろうか。しかも困ったことに、初めて作った僕の肉じゃがは割とおいしかったのである。
いっそ、あれだ。「たくさん肉じゃが作っちゃったから、おすそわけに来ました」って、隣の部屋にお鍋を持って訪ねるのはどうだろう。
だめだ。男がやると、なんか変質者っぽい。下心丸出しである。
まあいいや。次はロールキャベツを作ろう。懲りてない。