Chopin Collection/Artur Rubinstein
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ポーランド出身のユダヤ系ピアニスト、ルービンシュタイン。いわずと知れた20世紀最高のピアニストの一人だが、なんとなく近寄りがたい巨匠のイメージがあって、あまりちゃんと聴いたことがなかった。


先日、タワーレコードに行ったら彼のショパン全集が安く売られていたので、買ってみた。これが、すごくいいのだ。録音は少々古いけれども1960年代まで来れば十分我慢できるレベル。よく回る指から繰り出される流麗な技巧。時にしっとり、時にさらりと流れる粋な歌いまわし。貫禄あるどしりとしたフォルテのコード、そしてこの人にか出せないあたたかくてカラフルな音色。


病的なまでに繊細な鬼気迫るフランソワのショパンも、華麗奔放でパワフルなアルゲリッチのショパンも、超人的なテクニックで完璧に構築されたポリーニのショパンも、ピュアで知的なピリスのショパンも、どれもほんとうに素敵だと思う。時代が古いぶん、むしろルービンシュタインの演奏スタイルに物足りなさを感じる瞬間もある。


けれども、そうした問題とは別の次元で、時代を超越した音楽というのは確かに存在する。ルービンシュタインの築き上げたスタンダードがあるからこそ、若い世代は思い切った挑戦をすることができたとも言えるのだ。そういう意味でこの録音は、カザルスの「無伴奏チェロ組曲」やグールドの「ゴルトベルク変奏曲」と並ぶ、人類の偉大なる遺産のひとつに数えるべきだろう。


特に名曲ぞろいの「夜想曲集」における、枯淡にして色っぽいあの絶妙なプレイは必聴だ。ちなみに僕は、女性が部屋に来たときはとりあえずビル・エヴァンスのピアノトリオかショパンの夜想曲集をかけることに決めている。ショパンが嫌いという女性には、未だに会ったことがない。