好きになった人には、なるべく幸せになってほしい。当たり前の話である。だから、僕以上に彼女を幸せにする男がいて、彼が彼女を奪うとするならば、それは正しいことなのだろうし、僕はそれを祝福しなければならない。僕はそのように大真面目に考えていて、実際にそのような局面に遭遇したならば、きっと彼女を手放してしまうだろう。
それが、純粋に相手の幸福を願う無私の心なのか、それとも責任を逃れようとするエゴイズムにすぎないのか、いまもってよくわからない。「おれが絶対に幸せにする」と断言するのが、いちばんかっこいいことぐらいはわかる。しかし、僕の弱さは誰よりも僕がよく知っているし、彼女をその巻き添えにはしたくない。
けれども、そういう考え方は、決して女に話してはいけないのだ。彼女は見たことのない悲しそうな顔をして、あなたはカミサマに近い人なんだね、と言った。あたしはとても人間臭い女なんだよ。