むかし、嫌いだったはずの本が、今読んでみると驚くほど面白かったりする。作家なら、梶井基次郎や太宰治あたりがそうだ。こどもにはわからない本というのは、確かに存在する。


歌人なら、石川啄木がかつてきらいだった。最近、iPhoneの無料アプリで何気なく読み返してみたのだが、これが、思ったより良いのだ。



やはらかに積もれる雪に

熱<ほ>てる頬<ほ>を埋<うづ>むるごとき

恋してみたし



頬<ほ>につたふ

なみだのごはず

一握の砂を示しし人を忘れず



こころよく

我にはたらく仕事あれ

それを仕遂げて死なむと思ふ



なんだか貧乏くさいし、センチメンタルに過ぎる。でも、少なくともこれらの歌はかなしいほどリアルだ。100年前に書かれたことを全く感じさせないのは、彼の歌がそれだけ人間の普遍性を切り取っているからだし、それこそが天才の証なんだろう。