「キャパシティという概念のないコピーライター」
かつて僕のことをそう評し、途方も無い量の仕事をくれたディレクターがいた。あの懐かしきいざなみ景気のころの話だ。実際は寝る時間を削ってコツコツ仕事をしていただけなのだけれど、フリーランスのライターとして、スピードと正確さならその辺の競合に負けない自信はあった。
その僕にとっても、祝日に2万字の原稿を書くのは、なかなかの重労働である。こんなことをしている会社員って、一体日本にどれぐらいいるんだろう。
僕はもともと出世欲も金銭欲も名誉欲もあまりない方で、そこそこの時間とお金があって好きな本が読めたらそれで大体満足してしまう男なのだけれど、この1年ほどで、だんだん考え方が変わってきた。
今いる場所で、満足してはいけない。本当にやるべきことをやれる環境へ、責任を持って、自分自身を運んでゆかねばならない。ジュリアン・ソレルにも負けないぐらい、僕は野心に燃えている。
だが、まずは今目の前にある死闘をくぐりぬけることだ。