学生時代、試験前の切羽詰った時期になると何故か猛烈に本が読みたくなるものだった。


「今、ここで勉強しなければ、明日絶対に大変なことになる!」


 と分かっているのに、そのドキドキを都合よく読書の喜びに転換して、結局本を読みふけってしまう。実際、いろいろと「大変なこと」は起こったような気はするのだが、結局のところ、今僕はこうして平然と世の中に暮らしているわけだし、あのとききちんと勉強していたら何か別の優れた人間になれた、というわけでもないと思う。なるようになるのだ。


 今でもその傾向は相変わらず引きずっていて、忙しいときほどのんびりしたくなって困る。三つ子の魂百まで、とはよく言ったものだと思う。


 あと、似たような傾向として、「今月、飲み会が多かったなあ。ちょっと使いすぎたかなあ」と思ったときこそ、一気に買い物がしたくなる。先日、読む暇なんかないのに15000円分の本(文庫本ばかりなのに)を買い、新しいスニーカーを買い、服を買い、CDを買ってしまった。浪費によって発生したストレスを、浪費によって発散しようとでもするのだろうか。


     ☆


 サン=テグジュペリの『星の王子様』の中に、小さな惑星に一人で住んでいる酔っ払いが出て来る。王子様が、


「どうしてお酒を飲むの?」


 と聞くと、


「忘れるためさ」


 と酔っ払いは言う。


「何を忘れるため?」


「恥ずかしいことを忘れるんだ」


「何が恥ずかしいの?」


「飲んでることが」


 ――人間誰しも、何かに依存して生きているものだ。アルコールの代わりが本だのCDだのであるなら、まだしもましかも知れない。少なくとも本の読みすぎで肝臓は壊れないし、二日酔いにもならない。


 尤も、中毒になら、なってしまうかもしれないけれど。