2,3週間ほど前のことになるが、我が家で飼っているトイプードルが4匹の仔を生んだ。
ついこの間までは、目も開いていなくて、ただただ母犬の乳に吸い付いては眠ってばかりいたやつらが、今では4匹そろって柵をよじのぼろうとしながらしきりにきゃんきゃん騒いでいる。ほんとうに元気な連中だ。指を噛ませると、ざらりとした小さい歯の感触もある。それが、ちょっと痛いのだけれど、やけに楽しい。
先月まではこの世のどこにも存在しなかった生き物が、今はこうして我が家の部屋にいて、僕の指を噛んでる。そう思うと、なんだか不思議な気がする。
4匹とも、完全に乳離れしたら、ペットショップに売り渡すことになっている。来月の今頃は、別の飼い主の家か、店の檻の中だ。
両手の掌の上に黒くて乳臭い動物を載せて遊びながら、彼/彼女は僕の手のにおいをいつまで覚えているだろうか。そんなことを考えてみたりする。
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――なにも、なにも、小さきものは皆うつくし。(『枕草子』より)