文章の上達のためには、まず、名文をたくさん読むべきだという。蓋し、正論であると思う。確かに大体において、本をよく読む人とぜんぜん読まない人とでは、文章の質はまったく違う。
だとすると、絵の上達のためには、やはり名画をたくさん見るべきだということになりそうだ。しかし、いい絵を見たからといって、絵がうまくなるかというと、どうもそうではないらしい。
友人のUは大学院で西洋絵画史を研究した経歴を持ち、英語・イタリア語に堪能なインテリ女性である。しかし、彼女の絵は、何を描いても必ず笑いが取れるほど、なんというか、とても個性的なのだ。
犬と猫を描き分けられないのはまだいいが(犬と猫は案外難しいモチーフだ)、ミッキー・マウスとドラえもんとを区別して描けないのは、もはや一種の異能といっていいと思う。
「絵画を勉強すれば、少しは絵がうまくなると思った」と、後にU女史は語っている。この事実からわれわれが学ぶべきことは少なくないと思う。
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ところでUはこのほど苦労してお金を貯め、アメリカに留学することになった。たとえミッキー・マウスがうまく描けなくとも、語学好きで勉強熱心な彼女はアメリカでうまくやっていけるだろう。神様はたぶんすべての人間に対して、それぞれに最も必要なものを与えてくれているのだ。