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 山田洋次監督「東京家族」(2013年)をみる。
 
 ラストで「この映画を小津安二郎監督に捧げる」とあるように、「東京物語」のリメイク映画である。
 時代を現代に移し、かつての映画にはなかった携帯電話もある。老夫婦が小旅行で宿泊するところも熱海ではなく、横浜のモダンなホテル、で、ダブルベッド。当然老婦人がよろめくところは熱海の岸壁ではなく、相模湾をみながら横浜のホテル前の空き地。
 
 主演の老夫婦には橋爪功と吉行和子、ちなみに小津の「東京物語」は笠智衆と東山千栄子。
 
 町医者の長男(西村雅彦)、その嫁(夏川結衣)。どう見ても西村は悪役にしか見えない。旧作では山村聡と三宅邦子。むかしの俳優は佇まいからして違う。
 
 はっきり言って、残念な映画。黒澤の「椿三十郎」のリメイクを見たときもガッカリしたが、この映画も同様。なにより余計な描写が多すぎる。カメラの前で演技するのは、語っているその人物だけ。その人物を映せばよいわけで、後ろでクサい芝居なんていらない。
 長女(中島朋子)の旦那、髪結いの亭主(林家正三)がつまらないジェスチャーをやったり、「どうもすいません」とか「大変なんですから」なんて言わせる山田洋次の神経がわからない。子供たち二人も、まあ現代だからああいう子なんだろうけど、「東京物語」の“勇ちゃん”には遠く及ばない。だいたい、おばあちゃんが階段で倒れたときに、まず“おばあちゃんどうしたの”と声をかけるだろう。それを聞いて家族が慌てて階段へ向かう、これでよかったのではないか。勇ちゃんが無言で階段から降りてきて、両親に告げるって、どうかと思う。
 
 また、瀬戸内の島へやってきた次男(妻夫木)の恋人(蒼井優)が歩いていると、ゆきちゃんという子の学校の先生が自転車ですれ違いざま、その美貌に思わず自転車を転ばしてしまう。これなんか「寅さん映画」。なんのおかしみもないのに、こういうことを平気でやってしまう脚本。お客笑いませんから。
 
 そしてこの映画の最大の欠点は、戦争で死んだ次男の未亡人(原節子)がいないこと。これは致命的。まあ、蒼井優ちゃんで代用させているんだろうけど・・・。
 
 そして3・11の大震災によって、脚本を書きなおしたとか。でも、なんだか無理矢理脚本の中にあの震災を滑り込ませたようで、なんともはや・・・。
 
 文句ばっかり書いてきたけど、ほんと、ひどい映画です。これを2時間20分見続けるのはちょっと苦痛でした。
 
 あとで調べたら、老夫婦役は最初、菅原文太と市原悦子を予定していたとか。またパーマネント屋を経営している長女は中島朋子ではなく、室井滋を予定していたとか。理由はよく分かりません。でもどっちにしても、小津「東京物語」での杉村春子には遠く及びません。
 
 映画を学んでいる学生さんたちは、このふたつの映画を比較して見たら、小津がいかに偉大であるか、とても参考になると思いますよ。
 小津が「東京物語」で描かなかった、削ぎ落とし、省略した部分を、この山田洋次の「東京家族」は全部描いてしまった。そういう映画です。