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「お母さんもう仕事いくから、早く起きて支度しなさい。」
そう言うと母はバタバタと私の視界から消えた。
それから私はしばらくの間、涙が止まらなかった。
いつも見ているはずの見慣れた景色や、肌で感じる布団の温もり、少し開いたカーテンから漏れる太陽光など、全てが嬉しかった。
あれは夢だったのか、現実だったのかは分からない。あの時の私の中では現実だったのだが、今では不思議と夢だったのかもしれないと思っている。曖昧な表現だが、夢と現実の狭間のような空間だったのかもしれない。
ようやく泣き止むと、布団から出て支度を始めた。
部屋から出て、トイレへと向かう習慣的な一連の動作に新鮮さを感じた。その時また涙が出そうになったが、何とか堪えた。
それから支度をする中で、母が作ってくれたお弁当をカバンの中に入れようとした際に、また涙が込み上げてきた。我慢したのだが、私はボロボロと泣いてしまった。
この日は、学校に遅刻した。
終わったでー
良い話やん
マオキ、ちゃんと読んでやー
ちなみに今寝れなくてキレてんでー★(ミラッ)それから感覚的に5、6時間経った頃、私は先ほど感じた違和感について1つの仮定を立てた。
私の体には何らかの異変が起きていて、トイレに行きたくなることもなければ腹も減らず、眠くなることもないのではないだろうか、というもの。
この状況において、冷静にこの様な仮定を立てた自分に、後々自分でも驚いた。
そしてこの仮定は更に数時間後、確信へと変わったのだった。
それから感覚的に数日が過ぎた。ほとんどの時間を何もせず、ただ目を閉じて過ごした。言葉で表せないほどに空虚な時間であった。
自分の体の異変に加えて、この空間の冷たく異様な空気である。私は気がおかしくなりそうだった。生きている感覚が失われつつあったのだ。頭の隅でもう死んでしまいたいとも思った。
そんな危険な状態の私でも、常に頭の中、真ん中にあったのは母のことだった。私は母が大好きだ。
母は私が小さいときに父と離婚し、女手一つで私を育ててきてくれた。なので私は人一倍母親からの愛情を受けて育ったと、勝手に思っている。
私は母に会いたくてしょうがなかった。母の顔を思い出すと自然と涙が出た。
もうどうしようもなく、私は仰向けになり目を閉じた。ずっとずっと目を閉じていた。それからずっと。
それからどれだけ経ったか分からない。ふいに何か聞こえた気がした。息を潜めて必死に耳を澄ましてみたが、何も聞こえなかった。
またしばらくした時だった。やはりまた聞こえた。確実に、何かが聞こえのだ。私はまた耳を澄ました。目を閉じて、無になった。
―――聞こえた。それは、私が一番聞き慣れている声で私の名前を呼ぶ声だった。
「お母さん?」
目を開けると、そこは私の部屋だった。
「何回呼んだら起きるのよ。早くしないと遅刻するんじゃないの?」
私は体を起こして入口に立っている母を見た。反射的に、涙が溢れてしまった。
「どうしたの?」
私が突然泣き出したので、母は心配そうにしたが、「怖い夢を見たの」と言うと、「そう。」といつも通りに戻った。