包み込む光の中、ナオキは目を開けた。

そこは、さっきまでいた場所とは次元そのものが違う世界だった。

ナオキの周囲は包み込むような光の空間が広がっていた。

(ここは…?)

その広がる空間の中、ナオキはトライスの姿のまま浮かんでいた。

ふと見ると、そこにディアルガとパルキアの姿があった。

「ディアルガ…それに、パルキア…」

二人は共にナオキを見ていた。

先に口を開いたのは、ディアルガだった。

「…よくやったな、ナオキ…」

「ディアルガ?」

ナオキがそう言うと、ディアルガはナオキに言った。

「オマエのおかげで、時空の歪みは消えて、シンオウ地方は危機から救われたぞ!」

「!」

ディアルガからの一言に、ナオキは一瞬耳を疑った。

「…それ…本当なの?」

「ああ。」

ディアルガはこくりと頷いた。

ナオキはまだ確証が持てない様子だったが、それでもひそかに感じていた。

シンオウ地方は、危機から救われた事。

シンオウ地方は護られたという事を…

「アンタ、やっぱりすげえな。オレ達伝説のポケモンでも、ここまでの事にはならないほどの技が出来たんだからよ。」

パルキアはナオキに言った。

「また救われちまったな。シンオウ地方を護れたのはアンタのおかげだぜ。」

「オレもそう思う。本当にありがとう。」

ディアルガは、ナオキに頭を下げた。

ナオキは珍しく動揺していなかった。

その代わり、落ち着いたような口調でディアルガとパルキアに言った。

「いいや…シンオウ地方が護られたのは私の力じゃないよ。」

「?」

ナオキからの意外な返答に、二人のレジェンドはきょとんとした。

ナオキは、『これさっきも似たような事言ったっけね』というような様子で、くすりと笑うと、ディアルガとパルキアに言った。

「シンオウ地方を護れたのは、私一人のおかげじゃない。君達や私の仲間、そして私同様にシンオウ地方を救いたいと思うみんなの『心』が一つになったからこそ出来た事なんだ。これは、他でもない『みんなのおかげ』だよ。」

例えナオキが今までにない大技をぶつけたとしても、それによって時空の歪みを消す事は保障出来なかった。

ナオキが技を放つ前に、ナオキの仲間のポケモン達が『心』を込めて技をぶつけた事によって時空の歪みが弱まり、そこにナオキの『心』を込めた大技をぶつけたからこそ、今回は見事時空の歪みを消す事が出来たのである。

これは決してナオキ一人では出来ず、ナオキのポケモン達だけでも出来ず、神と呼ばれしポケモン達だけでも出来ず、ここにいるみんなが力を合わせ、何より『心』を一つにしたからこそ出来た事…

全ては、みんながいたから、そしてみんなのシンオウ地方を護りたいという『心』があったからこそ出来た事なのだ。

「…そうだな。」

「アンタの言う通りだぜ。オレ達、みんなの力でシンオウ地方を救えたんだよな。」

ディアルガとパルキアは、微笑んだような様子でナオキに言った。

「オレ、またアンタと戦えてよかったぜ。ずっとアンタに頼ってばっかだったけど、こうしてアンタに恩返しができてよかったぜ。」

パルキアはナオキに言った。

「私もだよ。」

ナオキは、小さく微笑みながらパルキアに言った。

三人は、しばらく同じ空間を漂い続けていた。

それからしばらくして、ディアルガはナオキに言った。

「オレは、再びこの次元に帰る事にする。オレは元々無理矢理呼び出された身…何より、外にいればここにいる以上に狙われ、再びシンオウ地方を危機に立たせてしまう可能性もあるからな…」

ディアルガがそう言うと、それに続いてパルキアがナオキに言った。

「オレも帰る事にするぜ。」

「パルキアも?」

ナオキがそう言うと、パルキアはこくりと頷いた。

「ギンガ団に狙われていたとはいえ、ずっとエレメンタルにいるのもどうかと思ってよ…アンタらが色々頑張ってる中で、オレが何もしないでいるのにずっと違和感を覚えてたんだ。」

パルキアは、聖地エレメンタルに安全のためずっと匿ってもらっていたとはいえ、ただそのまま何もせずにここにいるのをひそかに気まずく思っていた。

それはいつしか、いつまでもここに居続けてはいけない、とパルキアの『心』に決心を抱かせるようになったのである。

パルキアは、テンガン山に行く時から決意していたのだろう。

これを機に、自らもディアルガと同じ場所に戻ろうと…

「アンタには本当世話になったな。オレを今日まで匿ってくれただけでなく、オレに色々してくれて本当にありがとうな。」

「…うん。私の方も、今までありがとう。」

ナオキは、ひそかに寂しさを覚えていた。

しかし、パルキアを引き止めるつもりはなかった。

全てはパルキアが決めた事。

そうである以上、パルキアの考えを尊重するのがいいのだから。

ナオキは、パルキアに言った。

「でも、もしまた来たくなったらいつでもおいで。私はいつでも君の事を待ってるからさ。もちろん、ディアルガもね。」

ナオキがそう言うと、少し暇を置いてパルキアは言った。

「ああ、そうさせてもらうぜ。そん時は、オレもちゃんと時空を移動出来るようになってみせるからな。」

「ははは、そうだね。」

ナオキは、笑いながらパルキアに言った。

ディアルガとパルキアもそれにつられて笑っていた。

「君との日々、本当に楽しかったよ。まさかレジェンドと同居する事になるなんて思いもしなかったもの。」

「そうだな。オレも、アンタとの日々、本当に楽しかったぜ。」

パルキアはナオキに言った。

ただ匿われている日々でも、ナオキ達と過ごした日々はパルキアにとってダイヤモンド以上の宝物だとパルキアは思っていた。

すると、そろそろ元の次元に戻る時が来たのか、ナオキはディアルガとパルキアから少しずつ離れ始めた。

「もう行っちまうのか?」

パルキアは、ナオキに言った。

その声は少し寂しそうな雰囲気だった。

「そうみたいだね。私も、そろそろ元の次元に戻るよ。」

ナオキの意志で離れているのではないが、ナオキは流れに任せるように、それに抗う事はしなかった。

ディアルガとパルキアは、ナオキを見送るような様子でナオキから離れていった。

遠ざかる二人のレジェンドの姿をナオキは見守り続けていた。

「またね、ディアルガ…パルキア…」

その一言を最後に、ナオキの意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

「…キ!」

「…!」

意識が戻ったのを感じた時、最初に戻ったのは聴覚だった。

一番最初に聞こえたのは、聞き覚えのある声だった。

少しずつ視界が元に戻っていった。

「ナオキ!」

ようやくはっきりした視界に映ったのは、マグマラシの顔だった。

どうやらナオキは少しの間気を失っていたらしい。

ナオキは体を起こした。

「ナオキ、気が付いたのか!?」

マグマラシはナオキに言った。

「やあ、マグマラシ。」

「ナオキ!」

マグマラシは、嬉しそうにナオキに飛びついた。

ナオキは、マグマラシに優しくそっと手を乗せた。

他の仲間達もナオキの周りに集まっていた。

ナナカマド博士、ヒカリ、コウキがナオキのもとに駆け寄っていった。

先にナオキのもとに到着したのは、ナナカマド博士だった。

すると、ナナカマド博士が言った。

「なんと…おまえがシンジ湖で会ったトライスだったのか、ナオキ…」

「あ…」

ナオキは、姿がトライスから元の姿に戻ってしまっている事に気がついた。

どうやら今回は、反動でフォルムどころか姿そのものまで元に戻ってしまったらしい。

「あははは…これで一気に三人にバレてしまいましたか…私の正体…」

ナオキはここまで来たらもはや正体がバレた事はどうでもよくなった。

守護者なのに、やはり正体の秘密を守るのは苦手なようである。

しかし、今のナナカマド博士は、それよりもシンオウ地方の平和が護られた事に気を向けていた。

「トライス…いや、ナオキ!おまえは何という…よくやってくれた!本当によくやってくれた!」

ナナカマド博士は、ナオキの活躍に『心』から感服していた。

「これほどドキドキした事は、60年の人生で初めてだ!」

つまり、ナナカマド博士は、還暦というわけだ。

「ありがとうございます。私も、みんなのおかげでシンオウ地方を護り抜く事が出来ました。これほどの事は、今まで生きてきた中で初めてです。」

ナオキは、まだナナカマド博士ほど生きてきてないとはいえ、今まで経験してきた戦いと比べれば、今回の事はまさしくそうと言えよう。

ヒカリがナオキのもとに駆け寄ってきた。

ヒカリは、ナオキに言った。

「博士ったら、あの後に色々調べて…それで、ナオキくんの事すっごい心配して、こんなところまで来たの…ナオキくん、無事でよかったね…」

ヒカリは、微かに涙を浮かべながらナオキに言った。

「そうだったのか…」

ナオキは、あらためて実感した。

シンオウ地方の危機に対して色んな事をしていたのは、自分達だけじゃなかったのだという事。

ナオキ達が戦っている間に、シンオウ地方を救うため、そしてナオキに少しでも力になろうと動いている人達がいたという事。

何より、誰もがみなナオキ達の事を『心』から思ってくれていたのだという事…

ナオキは、たくさんの仲間と『心』でつながっていたのだ。

ヒカリは、涙を拭った後、ナオキに言った。

「ナオキくん、これ…」

ヒカリは、あの時預けたブレスレットをナオキに差し出した。

ナオキは、しばらくブレスレットを見ていた。

その中で、あの時ヒカリに約束した事がナオキの『心』に蘇った。

ナオキは、ヒカリからブレスレットをそっと受け取った。

そのままナオキは、ブレスレットを腕にはめた。

「…果たせたね、約束。」

「やっぱり、ナオキくんが似合ってるわ。」

「ありがとう。」

ナオキの腕に戻ってきたブレスレットは、今まで以上に輝きを見せているように光っていた。

生きて帰って再びこのブレスレットをつける。

ナオキは見事ヒカリとの約束を護ったのだった。

少しして、今度はコウキがナオキに話しかけてきた。

「ナオキ、本当すごかったよ!キミがあのトライスだったのもそうだけど、キミがポケモンと同じ場所に立って戦ってたなんて…」

コウキは、目の前の存在に『心』からワクワクしていた。

「それに何より、キミがポケモンと一緒に力を合わせて、シンオウ地方を救っちゃうんだもん…本当すごすぎだよ!」

コウキは、今まで以上に目をキラキラさせながら言った。

こういった事は、まさしくこういう時でなければ遭遇する事自体出来ない事だけに、コウキが『心』から称賛するのももっともである。

「オレ、ナオキみたいなすごい人に会えて本当によかったよ!」

コウキのこの言葉には、ナオキの今の事に限らない、今までのナオキに対する思いが込められていた。

「ありがとう、コウキくん。私も、君と会えて本当によかったよ。」

ナオキは、コウキに微笑みながら言った。

コウキがナオキに色々与えられただけでなく、ナオキもまた、コウキに色んな事を与えられていた事にナオキは気づいた。

ひそかに、ナオキがこうして誰かに『心』から称賛されたのはこれが初めてだった。

ポケモンに関わる事は多くても、人と関わる事は少ない方だったナオキにとって、ここまでの関わりを持つようになったのはコウキが初めてだった。

それだけなく、ナオキの事を『心』から尊敬してくれたという事もコウキが初めてだった。

ナオキはコウキに、人と『心』から積極的に関わる事の良さを初めて教えられたのだった。

ナオキは、今まで経験した事がなかった嬉しさを『心』から感じていた。

そんな和気あいあいと話をしているナオキ達を、ナナカマド博士は静かに見守っていた。

ナナカマド博士は、空の方を向いた。

ナナカマド博士の見る先には、さっきよりも穏やかな青空が広がっていた。

ナナカマド博士は、空を見上げながら言った。

「誰の未来も…誰の世界も…何者かによって奪われるものではないのだ。」

ナナカマド博士がそう言うと、それに反応するようにナオキは言った。

「ですね…時も空間も、この世界に生きる全ての存在のものですからね。最後においしいとこ言われちゃったなぁ…」

ナオキは、あらためてナナカマド博士の論理的思考力に白旗をふった。

その時、ナオキはふと思い出したような反応をした。

「あれ?そういえば、奴らは?」

ナオキは辺りを見回した。

時空の歪みの事に気をとられていて、ディアルガに異常が起きた時から、ナオキはひそかにアカギの事を忘れてしまっていた。

ナオキは、辺りを見回したが、そこにアカギの姿はなかった。

(どうやら、私達が時空の歪みをどうにかしようとしている間に逃げたようだな…それどころじゃない事態だったとはいえ迂闊だったな…)

アカギは、ナオキがディアルガの異常に気付いてその場を離れた後、ナオキ達が時空の歪みの発生に気をとられている隙に『やりのはしら』から逃げ去っていた。

おそらく今頃はマーズ、ジュピターと共に既にテンガン山から姿を消している頃であろう。

ちなみに、マーズとジュピターはコウキとジュンヤによって共に打ち負かされていた。

ジュンヤも、エイチ湖の雪辱を見事果たしたというわけだ。

ジュンヤはその後、自らの実力をわきまえてか、『今はこれが限界かな…おい!…後は任せるからな!』とコウキに言い残し、コウキのポケモンを回復させた後、せっかちさがここでも表れたようにそのまま真っ先に去っていった。

皮肉な事かもしれないが、ジュンヤが自ら引いてくれた事により、ナオキの正体がジュンヤにまでバレるのは回避出来たというわけだ。

ナナカマド博士にバレたのは、その代償なのかもしれない。

マーズとジュピターを打ち負かした後、コウキ達一行は真っ先にナオキ達のいる方へ走っていったので、その後の事は明らかになっていない。

結果的にナオキ達は、幹部一人さえ捕まえられないどころか、どこに逃げたかさえつかめないままギンガ団を逃がしてしまった。

結局、今回はギンガ団の野望を阻止するだけに終わり、肝心のギンガ団を倒すまでには至らなかったというわけだ。

「ナオキ、アカギの奴、もうここにはいないみたいだぜ。あいつら逃がしちまったなぁ…」

マグマラシは少し消沈した様子でナオキに言った。

「迂闊だったとはいえ仕方ないよ。あの時は、それどころじゃなかったからね。」

そう言いながらも、ナオキはひそかにマグマラシと同じ心境だった。

野望は阻止出来たものの、あえて言うならば今回は『ギンガ団の野望を阻止するので精一杯だった』と言うべきであろう。

シンオウ地方の存亡をかけた事態だったとはいえ、それに気をとられ、アカギを逃がしてしまった事に、ナオキはおのれの未熟さを痛感した。

『やりのはしら』に、あの時の面影がまだ残っていたかような空気が微かに漂った。

その時…

「…!」

ナオキは、何かを察知したように空を見上げた。

ナオキの中で、アカギの声が聞こえてきた。

ナオキは、ガーディアンの力の一つとして、その場に残された残留思念をサイコメトリーみたいな形で聞き取る事が出来る。

これは、『ガーディアン・テレパシー』の能力の一部で、それもあってか、よほど強い残留思念でなければ基本は起きないのだという。

今回、ひそかにナオキは初めてその力を体験した。

アカギの残留思念は、ナオキに言った。

(…おまえにとって本当の究極とはなんだ?本当に光り輝く大切なものを知ってるのか?…まあ、いい。私はいつか必ず神となってみせる…そして、究極のものを自分のものとしてやる…)

その声は、残留思念と言えど、まるで本人が目の前にいるかのようにナオキには聞こえた。

それは、アカギの残留思念がそれほど強いものである事を伝えているようだった。

アカギの残留思念の声が終わった後、ナオキはそれに反論するように心の中で言った。

(ふん…貴様に言っても無駄さ。本当に大切な事を知らない…いや、知ろうともしない貴様ごときに言ってもね…)

ナオキは、『やりのはしら』の入り口に通じる方向を向いた。

おそらく、アカギはここから逃げたのだろう。

逃げた時から既に存在すら忘れていたほどアカギのその後を見ていなかった以上、アカギがどこに逃げたのかはもはやわかりそうもない。

ただ一つわかるのは…

(…少なくとも…奴はまだ諦めてはいないというわけだな…)

今回はアカギの野望を阻止出来たが、少なくともアカギはまだ諦めてはいない…いや、諦めるつもりはないと言うべきであろう。

今奴らはどこにいるのだろうか…

どこかでまた悪さをしようとしているのだろうか…

するとしたらどこでするのだろうか…

ナオキは、しばらくギンガ団の事を考え続けていた。

そんな中、ヒカリはナオキに言った。

「それにしてもさっきのポケモン達すごかったね。あれがシンオウを生み出したポケモンなのかなぁ…?」

ヒカリが話しかけてきた事に反応する形で、ナオキはさっきまでの考えをやめ、ヒカリの方を向いて言った。

「そうだよ。ここテンガン山を基盤に、あのレジェンド達がシンオウ地方を開闢したんだって。」

「やっぱりそうなんだ!すごーい!私達、シンオウ地方を生み出した神様に会えたのね!」

ヒカリは、今までの状況とは真逆な中にいるように、目をキラキラさせながらナオキに言った。

さっきまではシンオウ地方の危機だったとはいえ、それはもう本当の意味で過ぎた事。

そうである以上、今のヒカリにはこうしてレジェンドに、しかも二人同時に会えた事に対する嬉しさしかないのだろう。

ヒカリの様子に、ナオキは少し自分の中で変化が起きているのを感じていた。

それに続くように、コウキが言った。

「それにしても、あの伝説のポケモンがナオキと話を普通にしてたのにも本当にビックリしたよ。キミって本当に何者なの…?」

コウキはナオキに言った。

ナオキは、少しの間コウキを見つめていた。

そして、コウキに小さく微笑むと、ナオキは言った。

「ちょっと不思議な力を持ってる以外は、君達と同じ人間だよ。レジェンドにおいては…まあ、ちょっとした友達になってくれたって事かな。お互い『心』を通じ合えた形でね。」

そう話すナオキの口調は、ヒカリの時からひそかに表れていたが、さっきまでより少し安堵感のあるような雰囲気だった。

ヒカリとコウキに話しかけられた事は、ナオキの今までの心境を少し変える事に通じていた。

さっきまでのナオキは、アカギを逃がしてしまった事への後悔と、それに伴う自身の未熟さへの痛感、そしてこれからの事に対する不安に苛まれていた。

しかし、ヒカリとコウキに話しかけられた事と、それに対して返事をした事によって、それらはいつしかナオキの『心』から離れていた。

今のナオキは、ヒカリ、コウキ同様、さっきまでとは完全に別の心境に変わっていた。

逃げられた以上、その事をあれこれ考えていても仕方ない事。

今は、こうしてシンオウ地方の平和を護れた事の余韻に浸っておこう。

ナオキは、あらためてそう『心』からそう思ったのだった。

ナオキがようやく『心』から気持ちを切り替える事が出来たのか、周囲はすっかり明るい雰囲気になっていた。

「さっ、帰ろうよ!」

そう言って、ヒカリは真っ先にナオキの手を掴み、ナオキを促した。

「ち…ちょっと、ヒカリちゃん…」

ナオキは、ちょっと赤面した様子で言った。

しばらくの間、ナオキはヒカリを多少目をそらす形で見ていた。

その後、ナオキはあらためてヒカリの方に目を向けた。

「ま…まあ、そんなにせかさなくても、すぐ行くよ。」

ナオキは、少しまごついた様子でヒカリに言った。

そのナオキの様子をマグマラシ達は、少しくすりとした様子で見ていた。

 

 

 

 

 

こうして、ナオキ達とその仲間達によってシンオウ地方は護られた。

テンガン山は、今までにないようなとても穏やかな雰囲気を醸し出していた。

それはまるで、シンオウ地方の平和が護られた事を、シンオウ地方にいる全ての存在に伝えているかのように…

それは、シンオウ地方の空も同じようだった。

空は、いつの間にか晴れていた。

その晴天の大空は、今までとは違う、特別な明るさを持つ晴れ渡った青空だった。

晴れ渡る空にある太陽は、大きなしらたまのように輝いていた。

シンオウ地方を包み込むように、しらたまのように輝く太陽の明るい日差しがテンガン山を照らしていた。