テンガン山の中は静まり返っていた。
「ここからどうやって頂上までいけばいいんだ?」
「頂上どころか、一段上に行く道さえも見当たらないね…」
レントラーは、目を金色に光らせながら辺りを見渡していた。
ナオキ達がいる内部は、どこもかしこも道ばかりで、階段どころか坂道もほとんどない。
レントラーが透視能力で見渡しても、上に通じるルートは見当たらなかった。
ナオキは、テンガン山の内部を歩いた。
その時…
「…!」
ナオキは、ピクリと反応した。
「どうした?」
マグマラシがナオキに話しかけた。
「しっ…」
ナオキは、咄嗟にマグマラシに静かにするように言った。
マグマラシは、一瞬きょとんとしたが、ふとナオキが見ている方を見た。
「!」
その時、マグマラシもピクリと反応した。
二人のみた先に、見覚えのある服装をした人物がいた。
「ナオキ…あれ、ギンガ団員だよな…」
「そうみたいだね。」
二人は、音が響かない小さな声で言った。
団員は、だいぶ苛立ってるような様子だった。
「ここからテンガン山の頂上に行けないじゃない!」
団員は、癇癪を起こしたようにナオキ達とは真逆の大きい声で叫んだ。
「あいつもオレ達同様、頂上に行こうとして道に迷ってるみてえだな。」
「そのようだね…」
一応、アカギに限らず、他の団員達も何人かは頂上に行くように指示されてるようだ。
その時だった。
団員は、ふと思い出したかのような仕草をした。
「あれ?ハクタイシティじゃなくて、ヨスガシティの近くから登れって言われてたっけ?」
「!」
ナオキは、いつかのような団員の『大声の独り言』を聞き逃さなかった。
「マグマラシ、聞いた?」
「ああ。ばっちり聞いたぜ。」
ナオキとマグマラシは、そそくさとその場を後にした。
「…というわけで、私達が入った入り口は『ハクタイシティ方面』だから、そこからだと頂上に行ける道はないようなんだ。」
「それじゃあ、どこから行きゃあいいんだ?」
ムクホークがナオキに言った。
「これも聞いたんだけど、『ヨスガシティの近く』から行くらしいんだ。」
「という事は、『208番道路』の方から行くって事なのかな?」
レントラーがナオキに言った。
「そうなるみたいだね。」
「でも、そこから行ったとしても、どうやって上に登ればいいんだろう?オレの記憶が確かなら、あの方角も階段らしき場所はなかったよ。」
レントラーは、テンガン山を通った時、ひそかにナオキ達よりも周囲を確認していたので、テンガン山の細かい範囲を把握していた。
透視能力を使って周囲を確認していた事もあり、変わった場所があれば普通に気づいていた。
しかし、その中で特に変わった場所と思える所はなく、階段のような場所もなかったという。
「…ひとまず、まずはここから出て、208番道路に向かおう。」
そう言ってナオキ達は、一旦テンガン山を後にした。
「ここがハクタイシティ方面だとすると、ヨスガシティは確かここから東側方面だったよね。」
「だな。ともすれば、ここからテンガン山がある方にそのまま飛んでいけばいいって事になるよな。」
ヨスガシティは、シンオウ地方全体から見て、東側方面にある。
今いる入り口は、それと対極である東側方面。
そのため、結果的に今いる入り口がある方角、つまりテンガン山がある方角に向かえばいいという事になる。
「それじゃあ、ここからテンガン山に沿うような形で行こう。上がりすぎると寒さにやられるから、なるべく中腹より少し上くらいの高度で行こう。」
「わかったぜ。それじゃ、早速行こう。」
マグマラシがそう言うと、ナオキ達は、飛び立つ準備をした。
先ほどと同じ形でそれぞれの飛べる相手に乗った。
「全員乗れたね。それじゃあ、しっかりつかまっててね。」
「いつでもいいぜ。」
マグマラシと他の仲間達がそう言うと、ナオキはムクホークと共に体制を構えた。
「!」
その時、ナオキは一瞬何かに反応したように動きを止めた。
「どうしたんだ、ナオキ?」
マグマラシがナオキに言った。
「あ、いや何でもないよ。ごめんね。あらためて飛ぶよ。」
そう言ってナオキは、体制を立て直した。
「………。」
マグマラシは、何も言わないままナオキの事を見ていた。
長い付き合いであるマグマラシは、ひそかに感じていた。
ナオキが今動きを止めたのは、『ただ事じゃない気配を感じたから』じゃないのかと…
ナオキとムクホークは、息を合わせたように同時に地面を蹴ると、勢いよく飛び立った。
ナオキ達は、テンガン山に沿って飛行を続けていた。
ナオキは、時折何かを気にかけているかのように空を見上げていた。
「…なあ、ナオキ。」
「?」
ナオキは、聞こえた事を伝えるように少しだけ向く形でマグマラシの方に顔を向けた。
マグマラシも、ナオキが反応したのに気づいたらしく、ナオキに言った。
「あの時、結局何を調べてたんだ?それで、結果的に何がわかったんだ?」
マグマラシが聞いた事はまぎれもないストレートな事だった。
「そういえばそうだったね。オレもひそかに気になってたんだ。キミが調べものを終えた後、その前と比べて明らかにただ事じゃない雰囲気だったんだ。」
レントラーもマグマラシに続いてナオキに言った。
「…わかった。どっちみち知る事になるから、教えておくよ。」
ナオキは、エレメンタルで行った調べものと、それによって気づいた事をマグマラシ達に話し始めた。
「…それって本当なのか?」
マグマラシは、ナオキに言った。
その様子は、今までと違う、ただ事じゃない事を心から実感したような雰囲気だった。
「あくまでも私の推測ではあるけれど…サターンが言っていた事と私が調べた事、ギンガ団の言動を踏まえると、かなりやばい予感がするのだけは確かなんだ。」
ナオキは、この事を語っている間も明確にはわからないが、少なくとも今まで以上にただ事ではない事を超越するような予感を感じていた。
「それが本当だとすれば、シンオウ地方は大変な事になるのは確かだ…まさか、そこまでの事を…しかも、そんな形でもくろんでいたなんて…」
エルレイドも、かなり動揺していた。
ギンガ団の動向を一番多く、しかも一番近くで見ているエルレイドもナオキが話した事にかなり動揺していた。
元ギンガ団で、しかもボスに一番近い存在のポケモンでさえも動揺している事は、それだけギンガ団員さえ知らない大変な事が起きるのではないかという事がうかがわれる。
「それなら、なおさら急いだ方がいいかもしれねえな。オレも何となくやべえ予感がするのだけは確かだ。」
そう言ってムクホークは、体制を整えた。
「スピード上げるからさっきよりもしっかりつかまってろよ!」
ムクホークの声を聞いて乗っているエルレイドとロズレイドは、さっきよりも強くしがみついた。
「それじゃあ、私も続くよ。マグマラシ、レントラー、君達もしっかりつかまっててね。」
マグマラシとレントラーもそれに続き、強くしがみついた。
「もう大丈夫?」
「オレ達は大丈夫だぜ。」
「ボク達もいつでもOKだよ。」
背中の仲間達が呼びかけた時、ナオキはムクホークの方を向いた。
互いに目が合うと、二人はこくりと頷いた。
「それじゃあ、いくよ!」
この掛け声と共に、ナオキとムクホークは同時に速度を上げて、風を切るように飛んでいった。
それから少しして…
「…!」
ナオキは、視線の先に見えたものにピクリと反応した。
「みんな、着いたよ!」
ナオキ達の見た先には、208番道路の看板があった。
ナオキ達は、看板の前に着くと、その場に降り立った。
ナオキとムクホークが地面に着くと、背中に乗っていた仲間達も降りた。
「ここのようだね。」
「看板には、ヨスガシティを差してる方がテンガン山と対極にあるよ。」
レントラーが看板を確認して言った。
「あの団員が言った事からすれば、ここから入るみたいだね。」
ナオキがそう言うと、レントラーが言った。
「でも、ここからどうやっていくの?さっきも言ったけど、この入り口付近には階段どころか、登れそうな場所さえなかったけど…」
「…とにかく、頂上に行ける場所はここからしかないんだ。まずは、とにかく入ってみようよ。」
「…そうだね。」
前提としている事を理由に足止めになっていても始まらない。
一刻を争う状態にあるならなおさらの事だ。
ナオキ達は、再びテンガン山の中へ入っていった。