聖地エレメンタルに戻ったナオキ達は、テンガン山に向かうための準備を進めていた。

トバリギンガビルでの戦いで負った傷を治し、それぞれの戦いに向けた段取りを進めていた。

「ねえ、マグマラシ。ナオキはどうしたの?」

レントラーがマグマラシに言った。

「調べたい事があるらしいから、先に準備しててって言ってからずっとあの祠に閉じこもってるんだ。」

ナオキは、自らの手当てをした後、調べたい事があると言ってガーディアン達のいる祠に行き、それ以降ずっとそこに閉じこもっていた。

レントラーは、透視能力を使ってその祠を覗いてみた。

そこでは、まるで今まで以上に本格な調べものをしている事がわかるように、黙々と色々調べているナオキの姿があった。

「…どうやらそうみたいだね。それじゃあ、オレ達も今できる事をしていよう。少なくとも、いつでも出発できるようにはしておかないとね。」

「そうだな。」





その頃、ナオキは相変わらず黙々と調べものをしていた。

まるで、近未来のように、ナオキの周囲には空中に映し出されたモニターがところ狭しと並んでいる。

(…間違いない。これまでの事を踏まえれば、ギンガ団の目的や狙いはだいたいではあるけど、それなりに推測できる…)

モニターに映し出されたのは、ガーディアン達が収集したギンガ団に関する様々な情報だった。

それに限らず、『ある事』に関する資料のような映像も映し出されていた。

ナオキは、キーボードを押すように岩の部分にある個所を叩いていた。

どうやら、このモニターは下の岩の部分がキーボードのような役割をしているようである。

ナオキは、映し出されたモニターに触れた。

すると、タッチしたところがページを開いた。

どうやら、モニターは直に触れる形でクリックに相当する事などができるらしい。

今いる環境からは、とても考えられないハイテクぶりである。

時に聞こえるキーボードを叩くような音や画面にタッチするうえで聞こえる音を背景にナオキは考えを続けていた。

(幹部の一人であるマーズは、こんな事を言っていた…)





(全てを集めたギンガ団が何をするのかお楽しみに!)



(あの時マーズが言っていた事…当初は、ただ詳細を話さなかっただけだと普通に思っていたけど…)

ナオキは、マーズがあの時に言っていた事をふと思い出した際、サターンが言っていた事と照合した時にある疑問を抱いた。

(マーズが言っていた事を、サターンが話していた事を踏まえて考えるとしたら…『詳しい事はよく知らないけど』という背景のもとで言ったとも考えられるな…)

次に、ナオキが思い出したのは、ジュピターの事だった。





(ボスは伝説のポケモンの神話を調べ伝説のポケモンの力でシンオウ地方を支配する。)



(これからギンガ団は、みんなのためにすごい事をする。)



ジュピターの言動は、明確に話したのと、抽象的に話した二つがあった。

その中には、明らかに怪しいと言える内容もあった。

そして、ここでも『詳しい事を話していない』という事が表れていた。

その『みんな』とは、どちらの事を言ってるのだろうか…

ギンガ団のためというのが一番ストレートな結論になると普通に思うが、それもしっくりこなかった。

これも、サターンが言っていた事が反映されている事によるものだろう。

(今のところ推測できるのは…アカギ本人が言っていた事と、ジュピターが言っていた事が一致している事を踏まえる形で、『ギンガ団がレジェンドの力を使って、シンオウ地方を支配する』のだという事…)

普通に考えれば、すぐに導ける結論である。

しかし、それでもナオキは納得しきれていなかった。

(だけど…この推測…何かが引っかかるような気がする…)

ナオキは、この簡単なように思える結論に、ある疑問を抱いていた。

(この目的が、ギンガ団の狙いであるならば、それまでだけど…そもそも、それは本当に『ギンガ団全員』の狙いなのか…?)

ナオキは、サターンからあの一言を聞いて以来、ずっと疑問に思っている事があった。

それは、最終的な目的が『ギンガ団全員のための目的なのか』という事だった。

もし、そうであるならば、アカギは普通に目的の詳細を団員達に言うはずだ。

しかし、サターンが言っていたように…

(もっとも…ボスがテンガン山で何をやるつもりなのか…ボクも知らないのだがな…)


ギンガ団は、団員に限らず、幹部でさえも、『アカギの最終的な目的』を誰一人知らないという…

団員どころか、近い存在である幹部にさえも一番大事な事である『最終的な目的』を言わないというのは、どういうわけなのだろうか…



そして、ナオキはもう一つ、サターンの言っていた重要な事を思い出していた。

それは、あの意味深な発言をした後に言った事…



(だが少なくとも…)

サターンは少し間を置いて言った。

(これは、あくまでもボクの推測だが…ボスは、目的を達成したら、最終的に団員に限らず、ボク達幹部を含む全ての団員を切り捨てる可能性があるという事だ…)

サターンは、あの時こう言っていた。

その時の様子は、まるで今までとは違うような雰囲気を醸し出しているようだった。

(サターンの言っていた事を踏まえれば、結果的に…)

ナオキは、あくまでも推測であるが、まず一つの結論に達した。

次に、ナオキが考えたのは、『目的の詳細』だった。

(だとすれば、アカギがやろうとしている具体的な事は一体何なんだろう…)

ナオキは、心当たりがありそうな事をたどった。

(具体的に近い事を挙げるならば…カンナギタウンでアカギが言っていた事…)



(くだらない争いをなくし、理想の世界を作るための力を探している。)



(奴は、『争いのない世界を作る』と私に言っていた…一見、納得できるような事だったけど、あの時もしっくりこなかった。まるで、何かが引っかかるように…)

ナオキは、カンナギタウンで言っていたアカギの目的に懐疑を抱いていた。

理由の一つが、アカギが言っていた事と、あの時ジュピターが言っていた事が『ある重要なところ』で明らかに矛盾していたからである。

ハクタイシティでジュピターが言っていたのは、伝説のポケモンの力で『シンオウ地方を支配する』という事だった。

それに対して、アカギがカンナギタウンで会った時に言っていたのは、『争いをなくし、理想の世界を作る』という事だった。

ジュピターが言っていたのは、『支配する』というまぎれもない『自らの野望』である一方、アカギが言っていたのは、『理想の世界を作る』という、野望とはかけ離れた『理想論』だった。

アカギの言っていた事は、普通に見れば『この世界から争いをなくして平和な世の中にする』という、誰もが納得するいい理想を掲げた発言をしたという風にとらえられる。

それに対して、ジュピターの言っていた事は、『明らかにいけない事をやろうとしている』という事がわかるほどストレートな事だった。

ジュピターが言っていた事と、アカギが言っていた事は、明らかに『最終的に誰のためになるのか』という意味で完全に矛盾している。

ジュピターが言っていた事ならば、結果として『アカギがシンオウ地方を支配する』という形になり、その結果としてそれは『アカギだけのためになる』という結果になる。

一方、アカギ本人が言っていた事は、『アカギだけに限らない、みんなの(少なくとも、ギンガ団全員の)ためになる』という結果としてとらえる事ができる。

これらの事は、結果として『どちらもギンガ団全員のためになる』という結果が共通していないのだ。

しかし、それとは別にどちらの目的であっても、『確実に共通する事』があったのだ。

その事に気づいた時、ナオキの中で再び大きな不安がよぎった。

そして、ナオキはもう一つ調べた。

それは、『神話』についての事だった。

ジュピターが言っていた事に、『神話を調べる』という事があった。

ここからナオキは、『ギンガ団の最終的な目的は、レジェンドの存在や特徴に限らない、神話をもとにした事にあるのではないか』と推測してそれを調べる事にしたのだ。

ナオキは、映し出されたモニターに目を通した。

そこには、今まで集められたシンオウ地方の資料と、様々な神話について書かれた資料があった。

ナオキは、まずシンオウ地方の神話を調べた。

そこには、レジェンドに限らず、三大レジェンドのさらなる詳細も記されていた。

(カンナギタウンで、長老さんが言っていた事を踏まえると、あの三大レジェンドは『レジェンドを制御するための存在』…つまり、あの三匹の力は使われ方によっては、『レジェンドを意のままにできる』という事…捕まえる必要がないと言ったのは、こういうやり方があったからという事にはなるんだろうけど…)

ナオキは、一旦止まりあらためて推測した。

(…それだけじゃない。正当な捕まえ方をしないでレジェンドの力を利用するという事は…『正当な捕まえ方ではやろうとしない事』をやろうとしているからという事になる…)

ポケモンは、捕まえればその主の言う事をそれなりに聞いてくれる。

中には主のレベルの低さなどで聞いてくれない事もあるが、主のレベルがそれ以上ならば悪事だって普通に従う。

しかし、いかに主がレベルの高い存在であっても、規模によっては誰もが拒絶するほかないような事だったら、レジェンドならなおさら聞きはしない。

自らの意志でいつでも外に出られる例があるように、モンスターボールによる拘束は、そこまでの事ではないのだ。

(…つまり…奴がやろうとしている事は、それくらいただ事じゃない規模の事だという事…)

ナオキの中の不安はさらに募っていった。

シンオウ地方の資料の調べながら、ナオキはあの時の事を思い出していた。

(アカギは、テンガン山で初めて会った時、こんな事を言っていた…)



(キミは世界の始まりを知っているか?)



(このテンガン山は『シンオウ地方始まりの場所』。そういう説もあるそうだ。)



(…できたばかりの世界では争い事などなかったはず…)



(奴が頻繁に言っていたのは、『世界の始まり』、『始まりの場所』、『できたばかりの世界』のような、『開闢』を意味する事が多かった…)

一般では、物事の始まり、広い意味で言えば、世界の始まりを意味する『開闢』。

アカギの言動には、これまで頻繁にそういう事が飛び交っていた。


(そして、あの時も…それに近いような事を言っていた…)



(全てを終わらせる………いや…全てを始めよう。)

開闢よりも先に表れた真逆の言葉…

その言葉は、本人にとっては、『それこそが始まりの序章そのもの』であるかのような雰囲気だった。

その中で、ナオキは神話と照合して考えた。

(歴代の神話において、開闢の事を伝えている話はいくつもある…けど、その中には『既存の世界が既にある中で起きた開闢』というのもある…そして、その中で起きた開闢にある共通点は…)

ナオキは、シンオウ地方に限らない、様々な世界の神話を調べた。

その中で、まぎれもなく、『ある共通点』がある事がわかった。

ナオキは、今までの分析でわかった結論をまとめた。

(奴がやろうとしている事は、まぎれもなく『既存の世界がある中での開闢』…そして、サターンが言っていた事と、奴がやろうとしている事を照合してまとめるとすると…)

「…!!」

ナオキの中で、一つの結論がよぎった。

その瞬間、ナオキの表情は凍りついた。

(なんて事だ…という事は、奴の最終的な目的は…)

ナオキの中で、今までの経験をはるかに超越する感覚がよぎった。

「くっ!」

ナオキは、握りこぶしでその場の岩場を叩いた。

ナオキは、今まで開いていたモニターを閉じると、立ち上がり、祠のとある場所へ向かった。

(く…私とした事が…黒幕が既に近くにいた時に限らず…こんな大事な事にも…気づかなかったとはね…!)